これは、私が経験した奇妙で不思議な出来事の話です。あのポストが現れてから、私の人生は少しだけ変わりました。そして、そのポストを失った今も、私は時々その「未来の声」を思い出します。
目次
古びたポストとの出会い
そのポストを見つけたのは、偶然通りかかった廃墟の近くでした。寂れた公園の隅に、誰も使っていなさそうな古びたポストが置かれていたのです。深い赤色をしているはずが、年月を経てくすんでおり、ところどころに錆が浮いていました。
なぜかそのポストに惹かれるように近づくと、驚くべきことに中には一通の手紙が入っていました。
封筒を開けると、そこにはこう書かれていました。
「こんにちは。これは未来のあなたからの手紙です。」
最初は悪ふざけだと思いました。しかし、手紙の内容には、誰にも話していない私の秘密――小学生の時に母親に隠れて壊したお気に入りのカップの話まで書かれていたのです。
「これが本当に未来の自分から…?」
混乱しながらも、そのポストがただのものではないと直感しました。そして、その日から、私はそのポストを大切に家に持ち帰ることにしました。
未来からの助言
不思議なことに、そのポストに毎日1通ずつ手紙が届くようになりました。それらの手紙は、全て私自身の未来からのものでした。
最初のうちは些細なアドバイスが多かったです。
「今日、電車を1本遅らせなさい。」
「そのカフェの新メニューを頼むといい。」
言われた通りにすると、偶然にも昔の友人と再会できたり、思いがけない出会いがあったりしました。次第に私は、そのポストからの手紙を頼るようになっていきました。
ある日、「今度の仕事のプレゼン、こういう流れにすると上手くいくよ」と書かれた手紙に従うと、プレゼンが大成功。上司に褒められ、大きなプロジェクトを任されることになりました。
「このポストがあれば、何だってできるかもしれない。」
そう思った私は、ポストを自分の「人生の指南役」のように扱うようになりました。
手紙がもたらす影
しかし、そんな日々が続く中で、少しずつ違和感が募る出来事が増えていきました。
「明日は家から出ない方がいい。」
そんな指示が来た日に限って、何事も起きませんでした。
また、ある時は「この日、何か大切なものを失う」と書かれていました。しかし、その日も何も起きません。
「もしかして、この手紙が未来を変えている?」
そんな疑念が浮かびました。ポストの指示に従うことで、私は何か大事な未来を見逃しているのではないか。ポストが本当に“未来”を教えているのか、それとも私の行動を“縛る”ものになっているのか分からなくなりました。
最後の手紙
ある日、ポストを開けると、これまでとは違う雰囲気の手紙が届いていました。
「ポストの力を手放す時が来ました。これからの人生は、あなた自身で選び取りなさい。」
その手紙を読み終えた瞬間、ポストが突然大きく揺れ、ゴンッという音を立てました。驚いて後ずさると、ポストの中が黒い空間のように変わり、最後にポンッという軽い音と共に、跡形もなく消えてしまったのです。
呆然とする私の手には、最後の手紙だけが残されていました。
ポストが残したもの
ポストが消えた後、私は不安に駆られました。これからは自分で判断しなければならないのです。しかし、意外にもその不安はすぐに消えました。
ポストがなくても、私は以前よりも冷静に物事を考え、決断できるようになっていたのです。それは、ポストがくれた助言のおかげで、自分の人生を見つめ直す力を養えたからだと思います。
その後の私
ポストを失った今でも、時々あの手紙たちを思い出します。ポストがあった日々は、不安と安心が入り混じった奇妙な時間でした。
でも、今は分かります。未来は手紙に書かれたものではなく、自分の力で作るものだということを。
もし、あなたの前に未来を教えてくれるようなアイテムが現れたら――それに頼りすぎず、時には自分の力で道を選ぶことが大切だということを忘れないでください。
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