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触れたものの過去が見える――不思議な手袋とその結末 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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もし、手に入れたアイテムで他人の過去が見えるとしたら――あなたならどうしますか?

それは、偶然手に入れた「不思議な手袋」で始まった、奇妙で不思議な出来事の話です。

手袋との出会い

その手袋と出会ったのは、雨の降るある日のことでした。

会社帰り、傘をさして歩いていた私は、古びた骨董品店の前で足を止めました。ガラス越しに何気なく見た棚の中に、なぜか引き寄せられるように目が留まったのです。

そこにあったのは、片方だけのレザー製の手袋でした。アンティークの風合いがあるわけでもなく、特別な装飾があるわけでもない、普通の手袋。でも、なぜか骨董品店に売られていた。

「その手袋、何かの縁かもしれませんよ。」

店主の言葉に押されるように、それを買って帰りました。

不思議な力に気づく

その手袋を手に入れた翌日、何気なく部屋の机に置いていた小さな置物を触った瞬間、突然目の前にイメージが広がりました。

――誰かがその置物を棚から選び、レジに並んでいる場面――

まるで映画のように、その置物が過去に経験した出来事が脳内に再生されたのです。

驚いて手を引っ込めると、映像は消えました。試しにもう一度手袋をつけ、別の物に触れてみると、同じようにその物の過去が見えたのです。

力を使い始める日々

最初は面白半分でした。

古い本に触れ、その本がどんな人に読まれ、どんな場面で置かれていたのかを知る。スーパーの買い物袋に触れて、直前に何を買ったかを知る――些細なことでも、不思議な力を楽しんでいました。

しかし、やがてその力の実用性に気づき始めました。

友人が落とした腕時計が見つかったときどこで落としたか知りたい言われたとき、その時計に触れてどこで落としたかを特定。さらに家族の形見の写真立てに触れ、亡くなった祖父が最後に手に取った場面を見て、家族に伝えることもできました。

この手袋はただの骨董品ではなく、「過去を知る力」を秘めた特別な道具だったのです。

手袋がもたらした疑念

しかし、この力は時に「知りたくない過去」も教えてくれました。

恋人の部屋で手袋をつけたまま何気なく椅子に触れたとき、見知らぬ男性が座っている場面を見てしまった。友人が貸してくれた本に触れたとき、自分の陰口を言っている映像が浮かんだ。

知らなければ平穏でいられたはずの真実が、次々と目の前に現れる。

「知ることが必ずしも幸せにつながるわけではない。」

その事実が私の心に重くのしかかるようになりました。

手袋との別れ

そんなある日、いつもと同じように手袋を使っていた時でした。

ふとした不注意で手袋をつけたまま火のついたロウソクに手をかざしてしまい、手袋が焦げてしまったのです。

慌てて火を消しましたが、手袋は使い物にならなくなっていました。

その瞬間、心の中に妙な安堵感が広がりました。

これで、この力から解放される――そんな気持ちだったのです。

手袋の意味

今では、あの手袋はただの「不思議な思い出」として記憶の中にあります。

過去を知る力が与えてくれたものは多かったけれど、それ以上に「知らない自由」の大切さを教えてくれました。

もしもまた、あの手袋のようなアイテムが現れたら?次はきっと、手を伸ばさないと思います。



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