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家まで送ってくれる「不思議なバス」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

小学生の頃、放課後にバスで帰宅するのが日課だった。

いつものようにバス停で待っていたのに、その日乗ったバスは、少しだけ違っていた――。

第一章:違和感の始まり

その日は、授業が終わってから友達と少し遊び、普段より遅い時間にバス停へ向かった。

夕方の空が薄暗くなり始める中、見慣れた路線バスがやって来た――いや、正確には「ちょっと違う」バスだった。

「なんか古い感じだな……。」

普段のバスはピカピカの新車なのに、そのバスは少し色褪せていて、窓ガラスには細かな傷があった。

「まぁ、代わりのバスとかあるし、別にいいか。」

そう思いながら、私は乗車した。

第二章:奇妙な車内

車内は普段と同じように見えたが、よく見るといくつか違和感があった。

座席の配置が少し古風で、吊り革もどこかくすんでいる。乗客はまばらで、皆無言のままじっと前を向いていた。

運転手も顔がよく見えない。制服の襟元だけがちらりと見えるが、目線を上げるとどうしても顔がぼやけて見えた。

「まぁいいや、もうすぐ家だし。」

私は気にせず、いつもの席に座り、ぼんやりと窓の外を眺めた。

第三章:変わりゆく風景

バスはスムーズに走り出し、見慣れた道を進んでいった。

しかし、いつも通る交差点を曲がるはずの場所で、バスは直進した。

「……え?」

道沿いの景色もどんどん変わり、見たことのない古い建物や木々が増えていく。

「これ……どこ?」

運転手に声をかけようと立ち上がりかけたその時、隣の席に座っていたおばあさんが小さな声で言った。

「座ってなさい。このバスは、ちゃんと送ってくれるから。」

その一言に、私はなぜか反論できず、再び席に座り込んだ。

第四章:突然の静寂

バスはしばらく進んだ後、突然止まった。

周囲は真っ暗で、外には何も見えない。ただ、車内には妙な静けさが漂っていた。

乗客の誰も動かず、運転手も黙ったまま。何かがおかしいと思った瞬間、車内の明かりが一瞬だけ消えた。

「……!」

再び明かりがついたとき、車内には私一人だけが残されていた。

第五章:家の前

次に気づいたとき、私はバスの中ではなく、自分の家の玄関に立っていた。

「……え?」

手には学校のカバンを握っていた。

玄関の鍵を開け、中に入ると母親が驚いた顔で出迎えた。

「早かったわね! おかえり」

「え、ただいま……。」

思い返してみると、乗っていたバスがどんなだったのか、なぜかはっきり思い出せない。

「変だな……。」

自分の中に湧き上がる違和感を拭えないまま、その日は眠りについた。

結末

それ以来、私はあの「少し違うバス」を見たことがない。

ただ、あの日感じた不思議な感覚は、今でも時々思い出す。もしまたあのバスがやって来たら――あなたは乗りますか?



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