目次
【プロローグ】
そのラーメン屋に出会ったのは、深夜0時を回った頃だった。
仕事で帰りが遅くなり、空腹を抱えながら街を歩いていると、ふと路地裏から醤油の香ばしい匂いが漂ってきた。
「こんな時間にラーメン、太りそうだな…?」
普段は見かけない場所だったが、空腹には勝てず、その匂いに誘われるように路地を進んだ。
【不思議な佇まい】
路地を抜けた先には、古びた屋台がぽつんと佇んでいた。赤い提灯には「ラーメン」とだけ書かれている。
客はおらず、屋台の中には初老の店主が一人で立っていた。
「いらっしゃい。」
声をかけられるままにカウンターに座ると、店主は何も聞かずにラーメンを作り始めた。注文を取る気配もなく、私が何を食べたいかも聞かない。
「えっと、何ラーメンがあるんですか?」
尋ねたが、店主は答えずに湯気を立てながら麺を茹で続けていた。
【謎のラーメン】
数分後、店主は一杯のラーメンを私の前に置いた。
スープは透き通るほど澄んでおり、具材はシンプルにネギとチャーシューだけ。しかし、どこか普通のラーメンとは違う、不思議なオーラを放っている。
「どうぞ、熱いうちに。」
勧められるままに一口スープを啜ると、これまで食べたどんなラーメンとも違う深い味わいが広がった。
「これ、すごいですね。何が入ってるんですか?」
しかし、店主は微笑むだけで何も答えなかった。
【異変の始まり】
ラーメンを食べ終わる頃、奇妙な感覚に襲われた。
目の前の光景が歪み始め、周囲の音が遠くなっていく。意識が薄れていく中、かろうじて「どういうことですか?」と問いかけたが、店主の姿はぼやけて見えなくなった。
気がつくと、私は見知らぬ場所に立っていた。
【奇妙な世界】
目を開けると、そこは現実とは思えない場所だった。周囲には巨大な丼や箸が並び、空には麺が垂れ下がっている。
「ここは…どこだ?」
歩き回ると、道の端々にラーメンの具材のようなものが転がっている。具材の一つに触れると、頭の中に響くような声が聞こえてきた。
「スープの秘密を知りたいなら、最後の一滴を残すな。」
訳が分からないまま、さらに進むと、遠くに先ほどの店主が立っているのが見えた。
【店主との対峙】
「ここは何なんですか?」
店主は微笑みながら答えた。
「ラーメンはただの食事ではない。あなたの"可能性"を味わったんだ。」
「可能性…?」
「ここは、あなたがスープの最後の一滴に込めた意志によって作られた場所だ。この世界はあなた次第で変わる。」
言葉の意味が分からず混乱していると、突然目の前が暗くなり、私は再び屋台のカウンターに座っていた。
【屋台の消失】
目の前の丼は空っぽで、ラーメンを食べ終えたばかりのようだった。
「…今のは夢?」
そう思って改めて辺りを見回すと、目の前の丼も屋台も店主も消えており、路地には誰もいなかった。
しかし、胸ポケットには小さな箸置きのようなものが入っていた。それは、夢のような世界で見かけた具材にそっくりだった。
【エピローグ】
それ以来、私は夜遅くにその路地を訪れているが、あの屋台を見つけることはできていない。
時折、あのラーメンの味を思い出すたびに、もう一度あの場所に行けるのではないかと思う。しかし、店主の言葉の意味だけは今でも分からないままだ。
もしあなたが深夜の路地裏で不思議なラーメン屋に出会ったら――その一杯には、あなたの知らない"可能性"が秘められているのかもしれません。
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