目次
【プロローグ】
それは、私が実家で過ごしたお正月のことだった。
年末年始は家族全員が集まり、賑やかに過ごすのが恒例だったが、その年は少し様子が違っていた。両親と兄夫婦、私だけが実家に戻り、いつもより静かなお正月だった。
1月2日の夜、家族全員が疲れて早めに布団に入った後、私は不思議な物音で目を覚ました。
【奇妙な物音】
その音は、玄関から聞こえてきた。
「トン、トン、トン…」
まるで誰かが扉を軽く叩いているような音だった。
「こんな時間に誰だ…?」
時計を見ると深夜2時を過ぎていた。親戚や友人が訪ねてくるはずもない時間だ。
恐る恐る布団を抜け出し、廊下を歩いて玄関へ向かった。
【玄関に立つ人影】
玄関の扉には曇りガラスがはめ込まれていて、外から来た人のシルエットがぼんやり映る。
そこには人影があった。
小柄な体型で、和服のようなものを着ているように見えた。
「どなたですか?」
声をかけても返事はなかった。ただ、扉を叩く音が続くだけだ。
「トン、トン、トン…」
妙な胸騒ぎを覚えながらも、私は玄関の鍵を開け、扉を少しだけ開けた。
【奇妙な訪問者】
扉を開けると、そこには一人の老人が立っていた。
髪は白く、顔は深い皺に覆われている。だが、その目にはどこか不気味な光が宿っているように感じられた。
「どちら様ですか?」
老人は何も言わず、手に持った包みを差し出してきた。包みには古びた布が巻かれ、何か重いものが入っているようだった。
「これは…?」
私は受け取るのを躊躇したが、老人はじっと私を見つめてくる。仕方なく包みを受け取った瞬間、彼は何も言わずに背を向け、暗闇の中へと消えていった。
【包みの中身】
私は玄関を閉め、包みを開けてみた。中に入っていたのは、小さな鏡餅だった。
「なんだ、鏡餅か。」
しかし、その鏡餅は普通のものとは違っていた。餅の表面には細かいひび割れがあり、そのひびの間から赤黒い液体が滲み出ていたのだ。
手に取ると、冷たさを通り越して不快なほどの冷気が伝わってきた。
「気味が悪い…」
私はその鏡餅を台所に置き、部屋に戻ることにした。
【異変の始まり】
次の日、家族で朝食を取っていると、母が台所で声を上げた。
「これ、何?誰が置いたの?」
母が指さしていたのは、昨夜の鏡餅だった。だが、その鏡餅はさらに異様な姿に変わっていた。
赤黒い液体が広がり、餅の表面には無数の小さな手形が浮かび上がっていたのだ。
「知らない…でも、昨日の夜…」
私は昨夜の出来事を家族に話した。しかし、両親も兄夫婦も誰も知らないという。
【鏡餅の恐怖】
その日の夜、再び物音が聞こえた。今度は台所からだ。
「カリ…カリ…カリ…」
まるで何かが動いているような音。
恐る恐る台所へ向かうと、そこにはあの鏡餅があった。
だが、鏡餅の表面が大きく裂け、中から何かが覗いていた。それは人のような形をしていたが、明らかに普通の人間ではなかった。
「…誰だ!」
叫んだ瞬間、鏡餅が崩れ、中から無数の手が伸びてきた。
【最後の出来事】
必死に逃げ出した私が振り返ると、台所の鏡餅は跡形もなく消えていた。
次の日、家族に昨夜の出来事を話したが、誰も信じてくれなかった。しかし、それ以降、実家の台所には奇妙な手形が次々と現れるようになった。
お正月の鏡餅――それは、ただのお供え物ではないのかもしれない。何かを封じ込めているのか、それとも…。
もし、あなたの家に奇妙な鏡餅が届けられたら、決してそれを受け取ってはいけない。
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