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販売終了したエナジードリンク『アビス』の秘密 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

私は、エナジードリンクが欠かせない生活を送っていた。特にお気に入りは「アビス」という少しマイナーなブランドのエナジードリンクだ。

どこかミステリアスな黒と赤のデザイン缶に、少し癖のある甘苦い味。その独特の風味に一度ハマると、他のどのエナジードリンクも物足りなく感じてしまった。

だが、ある日を境に「アビス」は突然販売終了となった。

「販売終了…?なんでだよ。」

スーパーやコンビニを何軒回っても、店員からは同じ答えが返ってくる。

「アビスはもう取り扱いが終わりました。」

【奇妙な出会い】

アビスが買えなくなってから数週間が過ぎた。私はいまだに代わりになるエナジードリンクを見つけられず、不満を抱えながら日々を過ごしていた。

そんなある日、仕事帰りに駅近くの古びた自販機を見つけた。

錆びついた外観に、今では見かけない昭和風の広告が貼られている。その中に、見覚えのあるデザインが目に飛び込んできた。

「アビス…?」

間違いない。そこには「アビス」がしっかりと並んでいた。

「まだ売ってる店があるのか!」

私は迷うことなく小銭を投入し、ボタンを押した。

【違和感のあるアビス】

ガコン、と缶が取り出し口に落ちる音がした。

久しぶりに手にしたアビスの缶は、以前と同じデザインだった。しかし、何かが違う。表面が微妙にざらついていて、印刷も少しだけ色褪せているように感じた。

「古い在庫なのか…?」

気になりつつも、その場で缶を開け、一口飲んだ。

「これだ…やっぱりこれだよ。」

口に広がる独特の甘苦さ。懐かしい味が舌を刺激し、一瞬で疲れが吹き飛ぶ感覚を覚えた。

しかし、飲み終わった後、何か胸騒ぎのようなものが残った。

【夢と現実の交錯】

その夜、私は奇妙な夢を見た。

暗闇の中に浮かぶ無数のアビスの缶。その中から一人の男性が現れ、じっとこちらを見つめていた。彼は痩せ細り、不気味な笑みを浮かべている。

「アビスを飲む者は…選ばれた者。」

低い声が響いた瞬間、目が覚めた。

「なんだ、今の夢…」

時計を見るとまだ午前2時。妙な汗をかいており、胸のざわつきが収まらない。

【異変の始まり】

翌日から、日常に小さな異変が現れ始めた。

会社の同僚が私を見て、妙に顔をしかめる。街中を歩いていても、見知らぬ人が振り返ることが増えた気がする。

「俺の顔に何かついてるのか…?」

鏡を覗き込むと、特に変わったところはない。しかし、自分の瞳が少し濁っているような気がしてならなかった。

その夜、再び例の自販機を訪れた。

【自販機の謎】

古びた自販機は、前回と同じ場所に佇んでいた。しかし、近づいてみると、缶の並びに違和感を覚えた。

「あれ…前より増えてないか?」

前回はアビスが1列に並んでいただけだったが、今回は他の飲み物が消え、すべてアビスに置き換わっていた。

「どうなってるんだ…?」

再びアビスを購入し、一口飲む。味は変わらず最高だが、飲み終わった瞬間、急激な眠気が襲ってきた。

【真実の世界】

気づくと、私は見知らぬ場所に立っていた。

周囲は薄暗く、ぼんやりとした光が漂う空間。地面には無数のアビスの缶が転がっており、空には巨大なアビスのロゴが浮かんでいる。

「ここは…どこだ?」

声を上げると、再び夢に出てきた男が現れた。

「アビスを飲み続ける者は、やがてこちらの世界に引き込まれる。」

男の言葉に背筋が凍る。

「お前は既に選ばれたんだ。戻りたければ、アビスを絶て。」

【恐怖の選択】

目が覚めると、自宅の床に倒れていた。

「夢…だったのか?」

しかし、手元には空になったアビスの缶が転がっていた。

それ以来、私はアビスを飲むことをやめようとした。しかし、不思議なことに、どんなに探しても例の自販機を見つけることはできなかった。

【エピローグ】

それでも、時折街を歩いていると、遠くから聞こえてくる気がする。

「アビス、アビス…」

もしあなたがアビスを見かけたら――その一缶には、想像以上の何かが隠されているかもしれない。



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