目次
不慣れな道での帰り道
その日、私は取引先との打ち合わせが長引き、会社を出たのは夜の10時を過ぎていた。電車の最寄り駅まで戻るのが面倒になり、タクシーを拾うことにした。
タクシーは深夜にもかかわらずすぐに捕まり、私は車内でゆったりとシートに体を沈めた。
「○○町までお願いします。」
道順はいつも通り。運転手は無言で頷き、タクシーはスムーズに走り出した。
見慣れたはずの道が変わる
20分ほど経ったころ、ふと外の景色を見て違和感を覚えた。
「……あれ?ここさっき通った気がする。」
窓の外には、同じコンビニ、同じガソリンスタンドが見える。いや、見えるどころか、確かに一度通り過ぎた場所だ。
「すみません、この道、間違えていませんか?」
運転手に声をかけたが、彼は無表情のまま前方を見つめているだけで、まるで聞こえていないかのようだった。
少し不安になりながらも、タクシーは再び同じコンビニの前を通り過ぎる。
「ちょっと、さっきから同じ道をぐるぐる回ってますよね!」
今度は声を張り上げて運転手に詰め寄ると、彼はゆっくりと振り返り、低い声でこう言った。
「道は一つしかないんですよ。」
降りられないタクシー
その言葉に背筋が凍った。
「一つしかない……ってどういう意味ですか?違う道を通ってください!」
焦って言ったが、運転手は再び無言でハンドルを握り、ただひたすらに同じ道を進んでいく。
恐怖を覚えた私は、思い切ってタクシーを降りようとした。ドアノブに手を伸ばした瞬間、違和感に気づく。
「ドアが……開かない……?」
車内のドアロックは解除されているはずなのに、いくら力を入れてもドアがビクともしない。
夜道の無限ループ
再び外を見ると、またしても同じコンビニとガソリンスタンドが目に入った。
「ここ、本当に現実ですか……?」
運転手に問いかけても、彼は完全に無視している。
時計を見ると、タクシーに乗り込んでからすでに1時間以上経っているはずだが、景色はまったく変わらない。
不安が限界に達した私は、スマホを取り出して現在地を確認しようとした。だが、画面に表示されているのは「圏外」の表示。
「こんな都会で圏外なんて……。」
運転手の奇妙な言葉
もう一度運転手に問い詰めようとすると、彼が不意に口を開いた。
「この道を抜けるには、一つだけ条件があります。」
「条件?」
「その条件を満たさなければ、あなたは永遠にここを回り続けることになる。」
その言葉にゾッとした私は、すぐに問い返した。
「その条件って何なんですか?どうすればここから出られるんですか?」
運転手はそれ以上何も答えず、ただ前を見据えたまま運転を続けた。
無限ループからの脱出
しばらくして、運転手は突然タクシーを停めた。
「ここで降りてください。」
見ると、周囲は真っ暗な道端で、何もない。
「ここってどこですか?目的地じゃないですよね?」
「ここを降りるか、ずっとこの道を回り続けるか――あなたが決めなさい。」
選択の余地がないことを悟った私は、意を決してタクシーから降りることにした。
その瞬間、足元がふわりと浮くような感覚に襲われ、次に気づいたときには、自宅近くの駅前に立っていた。
あのタクシーは何だったのか
呆然としながら家に帰り、時計を見ると、タクシーに乗った時間からまだ10分しか経っていなかった。
「あれは夢だったのか……?」
だが、ポケットに入れていたレシートを見ると、タクシー会社の名前も運賃も何も書かれていない、ただの白紙の紙だった。
その日以来、私は夜遅くにタクシーを利用することは一切なくなった。
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