私は中学校で教師をしている者です。普段は生徒たちに囲まれた賑やかな学校生活を送っていますが、教員というのは、時には生徒たちがいなくなった後も残って仕事をしなければならないことがあります。今日お話しするのは、そんな夜の学校で起きた、私自身が体験した奇妙で不思議な出来事です。
目次
残業中の静寂な校舎
その日も、例によって教室の整理や授業の準備で学校に残っていました。時間は夜の10時を少し回った頃だったと思います。校舎には他の教員もおらず、静まり返った中、私は職員室でひたすら翌日の教材プリントを作成していました。
静かな環境に集中していたせいか、時間の流れを忘れてしまい、気づけば校舎全体が異様なほど静まり返っていました。校舎の外からは虫の声も聞こえず、時計の秒針の音がやけに耳に響いていました。
奇妙な足音の正体
プリントがようやく完成し、「さて帰るか」と立ち上がった瞬間、校舎の廊下から「コツ…コツ…」とゆっくりした足音が聞こえてきたんです。
夜の学校では、警備員が定期的に見回りをすることもあります。ですから、最初はその音を気に留めませんでした。でも、音の方向に耳を澄ますと、それはどうも普通の見回りの足音とは違うような気がしました。
というのも、その足音は階段を上がる音や下がる音が一切なく、まるで廊下をただ行ったり来たりしているように聞こえたからです。
気になって廊下を確認する
どうしても気になり、私は廊下に出てみました。懐中電灯を片手に、職員室から続く薄暗い廊下をそっと歩いていきます。しかし、廊下には誰の姿もありません。
それでも、足音はまだ聞こえている。しかも、自分が進む方向とは逆側から…。
「誰かいるんですか？」
声を出してみましたが、返事はありません。ただ足音だけが廊下の奥から響いてきます。
階段の上に立つ影
足音を追い、2階へ続く階段までやってきたとき、私は思わず息を呑みました。階段の上に誰かの影が立っているのです。
「こんな時間に生徒がいるわけないよな…」
そう思いながらも、その影に向かって声をかけました。
「誰だ？ここはもう立ち入り禁止だぞ！」
しかし、その影は一切動かず、こちらをじっと見つめているようでした。
急に現れる懐かしい教室
私はその影に向かって一歩足を踏み出しました。その瞬間、目の前の景色が一変したのです。
気づけば、私は全く別の場所に立っていました。そこは見覚えのある古い教室でした。壁には色あせたポスターが貼られ、机と椅子は少し錆びているようでしたが、間違いなく私が昔通っていた小学校の教室でした。
なぜこんな場所にいるのか、全く分かりません。ただ、一つ気づいたのは、その教室の窓から見える景色がどこか異様だったことです。校庭のはずの場所には真っ暗な森が広がり、風が吹く音すら聞こえません。
不思議な声
すると、教室の奥から声が聞こえてきました。
「先生、ここにいたんだね。」
振り返ると、小学生くらいの子供たちが教室の隅に座っていました。全員が私をじっと見つめていて、その視線には妙な圧迫感がありました。
「君たちは誰なんだ？」
私はそう問いかけましたが、彼らは答えず、ただ微笑んでいました。その笑顔がどこか空虚で、不気味に感じられました。
現実への帰還
突然、教室全体がぐらりと揺れ始め、私は目を閉じました。次に目を開けると、そこは元の廊下でした。時計を見ると、まだ夜の10時半を過ぎたばかり。
あの出来事が夢だったのか現実だったのか、今でも分かりません。ただ一つ確かなのは、私がその日以来、夜の学校に一人で残ることは決してなくなったということです。
「夜の学校の不思議な足音」
この話を生徒たちに話すと、「先生、怖がりすぎじゃないですか！」と笑われることもありますが、私にとっては忘れられない体験です。
もしあなたが夜の学校に足を踏み入れることがあるなら、ぜひ注意してください。その足音が本当に人間のものなのか、確かめる方法はないのですから…。
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