私は、レトロゲームを集めるのが趣味の30代の会社員だ。子供の頃、ゲームショップに通い詰めて遊んだゲームが大人になった今でも大好きで、暇を見つけては中古ショップやフリーマーケットを巡り、懐かしいタイトルを探している。
そんな私が、今でも説明のつかない奇妙な体験をしたのは、とある古いゲームを手に入れた時だった。
目次
見つけた謎のゲーム
その日は、休日を利用して郊外の中古ゲーム店を訪れていた。普段はあまり期待せずに見るだけなのだが、その日はやけに気になるソフトがあった。
それは、ラベルが擦り切れて文字がほとんど消えているカートリッジ型のゲームだった。値段も破格で、たった500円。店員に尋ねても「タイトルは不明ですね」とのことだったが、なぜか私はそれを手に取ると、即座にレジへ向かっていた。
自分でもなぜそんなに惹かれたのか分からない。ただ、「買わなければいけない」と直感的に思ったのだ。
動き出したゲーム
家に帰り、早速ゲーム機にカートリッジを差し込んだ。少し不安だったが、問題なく起動した。画面に表示されたタイトルは「THE PATH」――直訳すると「道」という意味だ。
「聞いたことのないタイトルだな……」
タイトル画面はシンプルで、森の中を歩く一人のキャラクターが描かれているだけだった。プレイを始めると、操作方法は簡単で、キャラクターを上下左右に動かしながら、森の中を進むというものだった。敵もいなければ、特にゴールも見当たらない。ただひたすら道を進むだけだ。
ゲーム自体は地味だったが、不思議なことにやめられなかった。音楽もどこか心地よく、淡々と進む道には不思議な魅力があった。
最初のエラーメッセージ
1時間ほど進んだところで、突然画面がフリーズした。
そして、エラーメッセージが表示された。
「ERROR: 歩く速度を落としなさい」
「歩く速度を落とす？」
意味が分からなかったが、ゲームをリセットしてもう一度プレイを始めた。今度は慎重にゆっくりと進めてみた。すると、フリーズせずに道がどんどん続いていった。
「何だこれ……スピードを気にするゲームなのか？」
奇妙に思いながらもプレイを続けた。だが、さらに進むとまたエラーメッセージが出た。
「ERROR: 戻れ。過去を見直せ」
過去を振り返る操作
メッセージに従い、キャラクターを来た道を戻してみると、通り過ぎた木々や石、草むらが、まるで意味があるかのように強調されて表示されるようになった。
何度も同じ場所を通った気がしたが、進むたびに新しい光景が現れる。まるで、ゲームの中に「過去の出来事」が刻まれているようだった。
そしてある場所で、画面に奇妙なテキストが表示された。
「思い出したか？ まだ進むつもりか？」
私は驚いた。ゲームの中で何を「思い出す」必要があるというのか。
エラーが示す言葉
さらに進むと、エラーメッセージはより個人的なものに変わっていった。
「ERROR: 君はなぜ忘れたのか？」
「ERROR: あの約束を思い出せ」
その瞬間、頭の奥に何かがよぎった。子供の頃、私がよく遊んでいた近所の森の記憶だ。
そこは、幼馴染の「ユウキ」と一緒によく探検していた場所だった。ユウキは引っ越しで遠くに行ってしまい、それ以来、私は彼と連絡を取っていなかった。
「これが何か関係しているのか……？」
ゲームの結末
最終的に、道の果てにたどり着いた時、画面にはこう表示された。
「ゴールではない。再会のきっかけを作れ。」
その瞬間、画面が暗転し、ゲームは突然終了した。再び起動しても、カートリッジは全く動かなくなってしまった。
現実での再会
その出来事が気になり、私は懐かしさもあってユウキの連絡先を調べた。幸い、共通の知り合いを通じて彼の連絡先を手に入れることができた。
久しぶりに話したユウキは驚きつつも喜んでくれた。そして、話の中で彼が引っ越し先でもずっと「一緒に遊んだ森のことを覚えていてくれるかな」と思っていたことを知った。
「君のことを忘れてたわけじゃない。でも……あのゲームがなかったら思い出さなかったかもな。」
奇妙なカートリッジの行方
その後、あのカートリッジはどこかに消えてしまった。引っ越しの際に無くしてしまったのか、それとも手元から消える運命にあったのかは分からない。
ただ、あのゲームが私に「何か大切なものを思い出させるために現れた」のだという気がしてならない。
もしあなたが、どこかで奇妙なゲームを手にすることがあれば――それは、あなたの忘れていた過去を思い出させるためのものかもしれない。
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