目次
【プロローグ】
静かな居酒屋で、友人と二人で飲んでいた。平日の夜とあって店内は空いており、カウンター席に並んで座った私たちは、軽く刺し身をつまみながら他愛のない話をしていた。
友人の名前はタケル。大学時代からの親友で、酒が入ると時々妙に怖い話を語り出す癖があった。
その日も、話の流れでタケルが「ちょっと変わった怖い話があるんだ」と切り出してきた。
「なぁ、これ、聞きたいか?」
「まぁ、怖い話は嫌いじゃないけど…どうせまた大げさに話すんだろ?」
そう冗談めかして言うと、タケルは珍しく真剣な表情でこう答えた。
「いや、これはガチなんだよ。俺が実際に体験した話だから。」
【タケルの語り:奇妙なアルバイト】
タケルが話し始めたのは、大学時代にやっていたアルバイトの話だった。
「大学3年の夏休みだったかな。俺、夜勤のバイトを探してて、知り合いから変わったバイトを紹介されたんだよ。」
「変わったバイト?」
「うん。詳しい仕事内容は聞かされずに、『とにかく深夜に倉庫で軽作業をするだけだ』って言われた。時給も良かったし、深く考えずに引き受けたんだけど…」
ここでタケルは一口ビールを飲み、話を続けた。
「現場は郊外の古い倉庫でさ、夜中の1時から4時まで作業するってやつだったんだ。でも、初日から何かがおかしかった。」
「おかしいって、何が?」
「その倉庫、やけに静かなんだよ。外も中も。しかも俺以外にバイトがいない。俺一人で、ただ指示された通り荷物を片付けるだけだったんだ。」
【奇妙な足音】
タケルの話は続く。
「2日目の夜だったかな。その日は特に何も変わらない作業だったんだけど、夜中の2時を過ぎた頃、背後から足音が聞こえたんだ。」
「足音?」
「うん、確かに誰かが歩いてる音。倉庫の床って金属っぽい材質だから、足音が響くんだよ。カン…カン…って。」
「でも、一人だったんだろ?」
「そうなんだよ。俺以外に誰もいないはずなのに、明らかに人が歩く音がしてた。それで怖くなって振り返ったんだけど、そこには誰もいなかった。」
タケルは軽く肩をすくめながら続けた。
「最初は気のせいかと思ったよ。でも、音はその後も止まらなかった。」
【視線の正体】
「そのうち、足音だけじゃなくて、誰かに見られてるような感じがしてきたんだよ。」
「見られてるって?」
「倉庫の奥に小さな窓があってさ、そこから誰かがこっちを見てる気がして仕方なかった。怖くて窓を直視できなかったけど、視線だけはビシビシ感じるんだよ。」
「で、その窓に誰かいたのか?」
「いや、俺はどうしても窓を確認する勇気が出なくて、見ないままその夜の作業を終えたんだ。でも、その後も毎回、足音と視線を感じるようになった。」
タケルの顔には、その時の恐怖が蘇ったような表情が浮かんでいた。
【最後の夜】
「一番怖かったのは、4日目の夜だったな。」
タケルは刺し身を箸でつまみながら、声を少し潜めた。
「その日はいつも以上に足音が近づいてきてさ。ついに我慢できなくなって、振り返ったんだよ。」
「そしたら?」
「そこには誰もいなかった。でも…」
タケルは一瞬言葉を詰まらせた。
「でも、倉庫の中央に置いてある大きな木箱が、一人でに動き始めたんだ。」
「動いた?」
「ああ、ゆっくりだけど確実に動いてた。まるで何かが押してるみたいに、ゴゴゴ…って音を立てながら。」
【木箱の中身】
「怖かったけど、俺はその木箱を確認しようと思って近づいたんだ。」
「おいおい、普通は逃げるだろ?」
「俺もそう思うけど、その時はなぜか引き寄せられるような感覚だったんだよ。」
タケルはビールを一口飲んで話を続けた。
「木箱の蓋には南京錠がついてて、中を見ることはできなかった。でも、箱に耳を近づけたら、中から小さな声が聞こえてきたんだ。」
「声?」
「そう。低くてかすかな声で、こう聞こえた。」
「たすけて…」
【バイトを辞める決意】
「その声を聞いた瞬間、さすがに限界で逃げ出したよ。それで、次の日にバイトを辞めた。」
「その後、その倉庫はどうなったんだ?」
「辞めた後、怖くて確認してない。あんな場所、二度と行きたくない。」
【エピローグ】
タケルの話を聞き終わった私は、少し怖くなりながらも笑って言った。
「いやぁ、相変わらず作り話が上手いな。」
しかし、タケルは真剣な表情で言い返した。
「本当にあった話だよ。そう言えば…その倉庫の住所、確かここからそんなに遠くないんだ。」
その言葉に、私の笑いは止まった。
もしその木箱がまだあの倉庫にあるなら――中身が何なのか、確かめる勇気はない。
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