目次
プロローグ
大学進学を機に一人暮らしを始めた私にとって、最寄り駅までの道は毎平日朝の日課のようなものだった。
片道10分ほどの道のりには、静かな住宅街が広がり、通勤や通学の人々が行き交う光景がいつも繰り返されていた。
しかし、あの「親子」を見かけるようになってから、その道はただの通学路ではなくなった――。
第一章:ベビーカーを押す親子
ある晴れた朝のこと。駅へ向かう途中で、ベビーカーを押す若い母親とすれ違った。
カジュアルな服装に整った顔立ち、そして、赤いベビーカー。特に目立つような親子ではなかったが、毎日のようにその親子を見かけるようになった。
最初は何も気にせず、「よくすれ違う人だな」と思う程度だった。
しかし、ある日、私はその親子に対して、得体の知れない不安を抱くことになる。
第二章:ベビーカーの中身
いつもはカバーがかけられているベビーカー。その日は珍しくカバーが外されていて、中の赤ちゃんが見える状態だった。
「赤ちゃんって可愛いんだろうな……。」
そんな軽い気持ちで、すれ違いざまにベビーカーの中をちらっと覗いた。
だが、そこにいたのは、赤ちゃんではなく「人形」だった。
肌はツヤツヤしていてリアルだったが、どこか作り物めいた不自然さが漂っていた。
一瞬、全身に寒気が走ったが、「見間違いだったのかもしれない」と自分に言い聞かせた。
第三章:赤ちゃんのようで赤ちゃんではない
数日後、またあの親子とすれ違った。
今度は母親がベビーカーを押しながら、赤ちゃんに向かって楽しそうに話しかけていた。
「空が綺麗だねー!」
その声がどこか浮ついているように聞こえ、私は思わずまたベビーカーの中を覗いてしまった。
すると、赤ちゃんの手足が微かに動いている。
「やっぱり、ちゃんと赤ちゃんだったんだ……。」
少し安心した瞬間、赤ちゃんの顔が目に入った。
その表情は動いていた。まばたきや口元の動き――確かに「表情」があった。
だが、笑顔でも泣き顔でもなく、ただ無機質な無表情だった。
その瞬間、私は「これが本当に人間の赤ちゃんなのか?」という疑念を抱いた。
第四章:赤ちゃん人形の変化
それからしばらく、その親子とすれ違うたびに、私は妙な緊張感を覚えるようになった。
ある日、駅へ向かう途中でまた親子を見かけた。赤ちゃんが泣き喚いており、母親は焦った様子であやしていた。
私は気にしないようにして通り過ぎようとしたが、赤ちゃんのマグマグ(ドリンクボトル)が転がってきた。
「すみません!」
反射的に拾い上げて母親に手渡すと、母親は不自然なほど大げさに受け取った。
「ありがとうございます……。」
その時、私は間近で赤ちゃんの顔を見てしまった。
赤ちゃんは、まるで人形が変化している途中のような、不気味な顔だった。
肌はプラスチックのようにツヤがあり、しかし目や口元はまるで人間のようにリアルだった。
「……これ、赤ちゃんじゃない。」
震える手でマグマグを渡すと、母親はお礼もそこそこに急いでその場を去っていった。
第五章:その後
それ以来、私はその親子を見かけることはなくなった。
ただ、あのとき目にした赤ちゃんの不気味な顔が、今でも脳裏に焼き付いて離れない。
あの親子は一体何者だったのだろうか? 赤ちゃんは本物だったのか、それとも人形が何らかの理由で生きているように見えただけなのか?
どちらにせよ、私はもう二度と駅までの道で「親子」に目を向けることができなくなった――。
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