大人になった今でも、小学生の頃に友人と体験した“あの出来事”を忘れることができません。
当時、私たちの間では「自転車冒険」がちょっとした流行でした。学校が終わると友人のタカシと二人で自転車に乗り、知らない場所へ行くのが日課でした。その日も、いつもとは違う道を走ろうという軽い気持ちで、少し遠くの山道を目指しました。
目次
山道にぽつんと立つ家
山道は静かで、車もほとんど通らず、私たちは緑に囲まれた道を気ままに走っていました。すると、ふとタカシが「あれ、何だ?」と前方を指差しました。
木々の間から、古びた家が見えたのです。その家は、山道の中にぽつんと建っており、周囲に人家は一切ありません。
屋根はボロボロで、外壁の木材は色あせ、ところどころ剥がれ落ちていました。窓ガラスもひび割れたものや、板で打ち付けられたものが混じっており、一目見て「人が住んでいない」と分かる佇まいでした。
「すごいな……探検しようぜ!」
タカシは興奮気味に家に近づいていきました。私も興味をそそられつつ、少しだけ嫌な予感がしました。でも、好奇心には勝てず、結局二人でその家に足を踏み入れました。
廃墟の中を探索
玄関は鍵がかかっておらず、少し押しただけでギギギ……と嫌な音を立てて開きました。
中は予想通り廃墟そのもので、床板は軋み、空気は湿っぽく、埃が舞っていました。それでも、探検気分の私たちはワクワクしながら部屋を回りました。
一部屋目には、古びた家具や壊れた食器が散乱していました。二部屋目には、カレンダーや新聞が置かれており、どうやら昭和の時代から放置されていることが分かりました。
「ここ、誰が住んでたんだろうな……」
タカシが興味津々であちこちを触るのを見て、私は少し怖くなり始めていました。
黒猫の出現
三部屋目に足を踏み入れた瞬間、突然「ニャアア!」という鋭い鳴き声が響き渡りました。
「うわっ!」
部屋の奥から黒い影が飛び出してきたのです。それは痩せ細った黒猫でした。驚いて後ずさる私たちを一瞥すると、猫は素早く廊下を駆け抜けてどこかへ消えていきました。
「びっくりした……猫かよ。」
タカシが胸を撫で下ろしながら笑ったのを見て、私もつられて笑いましたが、どうにも胸騒ぎが収まりませんでした。
不気味な人形たち
その部屋をさらに奥まで探索すると、古いタンスや箱が置かれていました。タカシが興味本位でその箱を開けると――中には日本人形やアンティーク人形が何体も詰められていました。
人形たちはどれも色褪せており、髪は乱れ、目はどこか虚ろな表情をしていました。その中には、着物を着た大きな日本人形や、西洋風のドレスを着た陶器の人形も混じっていました。
「……なんか、怖いな。」
私は思わずつぶやきました。タカシもさすがに気味が悪くなったのか、無言で人形を箱に戻しました。しかし、その時――。
動き出した人形たち
箱を閉じた瞬間、部屋の隅に置かれていた別の人形の頭が、カタッと音を立てて傾きました。
「えっ……今、動いた?」
タカシが驚いたように振り返ると、別の人形の手が微かに揺れているのが見えました。
「……気のせいだよな?」
私たちがそう思い込もうとした瞬間――部屋中の人形たちが、一斉にこちらを向いたように見えたのです。
恐怖の逃走
「うわああああっ!」
タカシが叫び声を上げ、私もパニックになってその場を飛び出しました。家の廊下を全力で走り、玄関から外に飛び出しました。
外に出ると、先ほどまでの不気味な空気が嘘のように、ただの静かな山道に戻っていました。
「……もう二度とあんなところ行かない!」
タカシと顔を見合わせ、そう誓いました。
大人になってからの疑問
あの家が何だったのか、なぜ人形たちが動いたのか――大人になった今でも分かりません。
あれが単なる偶然だったのか、それとも何か超常的な現象だったのか。ただ一つ確かなのは、あの家には何かがあったということです。
もし、あなたが山道でぽつんと建つ古い家を見つけたら、好奇心で中に入るのはやめた方がいいかもしれません。何かに出会ってしまうかもしれない――私たちがあの日そうだったように。
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