目次
【プロローグ】
社会人になって数年が経ち、仕事にも慣れてきた頃、俺は久しぶりに地元へ帰ることにした。
都会での生活は慌ただしく、昔の友人とは疎遠になっていたが、それでも地元に帰ると懐かしさが込み上げてくる。
特に、小学生の頃によく遊んだ近所の公園や、放課後に駆け回った通学路を見ると、あの頃の記憶が鮮明に蘇る。
しかし、その懐かしさの中に――何か異質なものが混じっていることに気づくのは、そう時間がかからなかった。
【懐かしい友達】
地元の駅を降り、久しぶりに家へ向かう途中だった。
ふと、後ろから誰かが俺を呼ぶ声がした。
「おーい! 久しぶり!」
振り向くと、そこには小学校時代の親友だったタクミが立っていた。
「おお、タクミ! 久しぶりだな!」
思わぬ再会に驚きつつも、俺は懐かしさに笑みを浮かべた。
タクミは昔と変わらず、少しやんちゃそうな雰囲気を残していた。
「お前、東京に行ったまま帰ってこねぇから、心配してたんだぞ!」
「まあな。久しぶりの地元だよ。」
タクミは「せっかくだし、ちょっと歩かないか?」と言い、俺たちは並んで地元の道を歩き始めた。
【違和感】
昔話に花を咲かせながら歩くうちに、俺は徐々に違和感を覚え始めた。
タクミは、俺の知らないはずのことを話していたのだ。
「そういえば、お前が東京で一人暮らししてる部屋って、ワンルームだっけ?」
「…なんで知ってる?」
「いやいや、お前が言ってただろ?」
言った覚えはない。
さらに、俺が最近食べたものや、仕事の愚痴までタクミは知っていた。
「お前、最近あのラーメン屋通ってるよな?」
「……。」
俺は、その瞬間ゾクリとした。
タクミとは何年も会っていない。それなのに、俺の日常を詳細に知っているのは、明らかにおかしい。
【タクミの家】
俺は話題を変えようと、「タクミの家、まだあの場所にあるのか?」と尋ねた。
しかし、その瞬間――タクミの笑顔がピタリと消えた。
「…俺の家?」
「いや、懐かしくなってさ。お前の家、まだあの角を曲がったとこに――」
「俺の家はないよ。」
「…え?」
タクミは、にっこりと笑いながら言った。
「俺の家、10年前になくなったんだ。」
その言葉が何を意味するのか、俺は理解するまでに時間がかかった。
タクミの家がなくなった? それはどういう――
「…待てよ。」
タクミの家どころか――
タクミ自身、10年前に事故で死んでいたはずだった。
【消えた友達】
俺の記憶の中で、封印されていた事実が蘇った。
タクミは10年前、事故で亡くなっていた。
ある日の放課後、俺とタクミは川沿いの道を自転車で競争していた。
そして、タクミはバランスを崩し、そのまま川へ転落。
必死で助けを呼んだが、流れが速く、タクミはそのまま戻ってこなかった。
それなのに――今、目の前にいるタクミは、一体誰だ?
【最後の問い】
「お前、本当にタクミなのか…?」
そう問いかけると、タクミはしばらく沈黙した後、少し困ったような笑みを浮かべた。
「……懐かしいな。お前とこうやって歩くの。」
タクミが足を止めた瞬間――次の瞬間、そこには誰もいなかった。
まるで最初からそこにいなかったかのように、タクミの姿は消えていた。
【エピローグ】
翌日、俺はタクミの墓参りに行った。
墓石の前に立ち、昨日の出来事を思い返す。
「…タクミ、また会えたな。」
手を合わせたその瞬間――
背後から「おーい!」という懐かしい声が聞こえた。
俺は、振り向かなかった。
もし、地元で「懐かしい人」に出会ったら――それが本当にこの世の人間なのか、気をつけた方がいい。
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