怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

消えないゴミ 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

俺は一人暮らしをしている、ごく普通のサラリーマンだ。

仕事が忙しく、部屋の掃除はあまり得意ではないが、最低限の片付けはしているつもりだった。

だが、ある日から――部屋のゴミが消えなくなった。

【ゴミが消えない】

最初の異変に気づいたのは、いつものように部屋を片付けていた時だった。

コンビニ弁当の空き容器、ペットボトル、ティッシュの丸まったやつ――普段通りにゴミ箱に捨てた。

だが、次の日の朝、起きてみると――

ゴミが床に散らばっていた。

「え…?」

最初は自分がうっかり倒したのかと思ったが、ゴミ箱はしっかりと立っている。

「変だな…。」

そう思いながら、もう一度ゴミを拾い、ゴミ箱に入れた。

しかし、翌朝になると――またゴミが元の位置に戻っていた。

【何度捨てても戻る】

試しに、ゴミ袋をまとめて玄関の外に出してみた。

だが、部屋に戻って30分もしないうちに――

ゴミが、また部屋の中にあった。

「…どういうことだ?」

気味が悪くなりながらも、俺は何度もゴミを捨てる作業を繰り返した。

ゴミ箱に入れても、袋に詰めても、玄関の外に出しても――

翌朝には必ず元に戻っている。

【友人の忠告】

「なんかヤバいことになってる気がする。」

不安になり、久しぶりに友人のカワイを家に呼んだ。

事情を話すと、カワイは呆れたように笑った。

「お前、疲れてんじゃねぇの?」

「でも本当に戻ってくるんだよ。」

「じゃあ試しに、俺が持って帰ってみるか?」

カワイはそう言いながら、俺の部屋のゴミを適当に袋に詰め、持ち帰ることになった。

【翌朝の異変】

翌朝、俺は期待と不安を抱えながら目を覚ました。

部屋の中を見回す。

――ゴミは、なかった。

「よかった…。」

やっとこの不可解な現象から解放されたのかもしれない。

そう思った瞬間、スマホが鳴った。カワイからのLINEだった。

「おい、ふざけんな。なんでこんなことするんだ?」

「…は?」

俺はすぐに電話をかけた。

「お前、どういう意味だよ?」

すると、カワイの声が震えていた。

「ゴミの中に…俺の写真が入ってた。」

【ゴミに紛れていたもの】

「お前が仕込んだんじゃないのか?」

カワイは怒っているようだったが、俺にはまったく身に覚えがなかった。

「待て待て、本当に知らないんだよ!」

「じゃあ何だよこれ。子どもの頃の俺の写真が、ゴミの中に入ってたんだぞ!」

「……。」

何かがおかしい。

「その写真、どうなってた?」

「裏に…何か文字が書いてあった。」

「なんて?」

カワイが息を呑む音が聞こえた。

そして、彼は震える声で言った。

「お前も、捨てられない。」

【エピローグ】

その日以来、カワイとは連絡が取れなくなった。

俺は相変わらずゴミを捨てられないままだ。

しかし――最近、妙なことに気づいた。

ゴミの中に、見覚えのない写真が増えている。

それは、知らない誰かの写真。

どれも、裏には同じ文字が書かれていた。

「捨てられない。」

そして、ふと気づいた。

その写真の人物たちは――

以前、この部屋に住んでいた住人だったのではないか、と。

俺は、この部屋に"捨てられた"のかもしれない。



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