怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

気味の悪い隣人 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

私は都内のワンルームマンションで一人暮らしをしている。

特に変わったことのない、平凡な生活。

しかし、ある日を境に、私は気味の悪い違和感を覚え始めた。

それは、「隣人」の存在に気づいた時からだった。

【静かすぎる部屋】

このマンションに引っ越してきて半年ほど経つが、隣の住人を一度も見たことがなかった。

隣の部屋のドアが開く音も、テレビの音も、話し声すら聞こえたことがない。

「単に静かな人なのか?」

そう思っていたが、ある夜、ふと気づいた。

「この部屋、一度も電気がついているのを見たことがない…?」

マンションの廊下を歩くと、どの部屋にもカーテン越しに微かに明かりが漏れている。

だが、隣の部屋だけは、いつも真っ暗なのだ。

「留守がちなのか?」

そう思いながらも、心のどこかで違和感が拭えなかった。

【郵便受けの謎】

ある日、仕事帰りにふと隣の部屋の郵便受けを見た。

何も入っていない。

マンションの住人なら、チラシや郵便物が多少は溜まるはずだ。

だが、そこには一枚の紙切れすらなかった。

「…おかしくないか?」

ふと嫌な想像がよぎる。

「もしかして、もう何年も住人がいないのか?」

いや、でも管理会社から部屋が空いているとは聞いていない。

それに――確かに深夜になると、隣の部屋から微かな物音が聞こえてくるのだ。

【視線】

その夜、布団に入り、眠りにつこうとした時だった。

「カサ…カサ…」

何かが擦れるような音が聞こえた。

壁越しに、小さな物音がする。

「隣の部屋か?」

いつもは静まり返っているのに、この日はかすかに音がする。

耳を澄ませていると、今度は――視線を感じた。

「……誰かいる?」

妙な気配がする。

気のせいかと思いながらも、壁に耳を当てた瞬間――

「……見てるよ」

壁の向こうから、誰かの声が囁いた。

【隣の部屋に誰が?】

私は飛び起き、心臓の鼓動を抑えながら、スマホを手に取った。

「いや、気のせいだ…疲れてるんだろう…」

そう自分に言い聞かせたが、寝られるはずもない。

翌日、管理会社に連絡し、思い切って聞いてみた。

「あの、隣の部屋って…誰か住んでますか?」

すると、担当者は少し戸惑った声で答えた。

「えっと…今は誰も入居していませんが…?」

「……え?」

「以前住んでいた方は数年前に退去されて、その後ずっと空室のはずですが…。」

「いや、でも…物音が…。」

「それは…気のせいでは?」

そんなはずはない。昨夜、確かに声を聞いた。

壁越しに、はっきりとした囁きを――

【最後の違和感】

管理会社の言葉に納得できず、私はその夜も眠れずにいた。

深夜2時――。

再び、隣の部屋から微かな物音がした。

「…やっぱり誰かいる。」

鼓動が早くなる。

だが、今度は違う。

音は――

壁の向こうではなく、部屋の中から聞こえていた。

「カサ…カサ…」

私はゆっくりと振り向いた。

そして、部屋の隅――暗闇の中でぼんやりとした影を見つけた。

それは、壁の方を向いて、じっと何かを覗き込んでいた。

【エピローグ】

翌朝、私はその部屋を引き払った。

隣の部屋には、誰もいなかったはずだ。

それなのに――。

あの夜、隣の部屋から聞こえた音は、一体何を見ていたのだろう?

そして――。

「本当に空き部屋なのか?」

その疑問だけが、今も頭から離れない。

あなたの隣の部屋――本当に誰もいないと、思っていますか?



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