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海沿いに並ぶ白い影と謎のクレジットカード 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

ある夏の終わり、私は友人と二人で車を借りて、海沿いのドライブに出かけた。

特に目的地もなく、気ままに走るのが好きだった。

青い海、白い波、心地よい潮風――その景色は、どこまでも続いているように思えた。

しかし、その日のドライブはある奇妙な出来事で、忘れられないものになった。

【白い影】

日が沈み始めた頃、人気のない古びた海岸沿いの道路を走っていた。

ふと、助手席の友人が前方を指差して言った。

「おい、あれ見ろよ。」

道路の先、海岸線に沿って――無数の白い影が並んで立っていた。

「なんだ、あれ?」

遠くから見ると、人のようにも見える。だが、何かが違う。

近づくにつれて、背筋が冷たくなる感覚が襲った。

彼らは全員、真っ白な服を着て、こちらに背を向けて並んでいた。

【奇妙な男】

私たちは恐る恐る車を停めた。

友人が窓を少し開け、耳を澄ます。

波の音の中に、微かに聞こえる声――。

「…戻ってこい…戻ってこい…」

まるで誰かを呼び戻しているような、囁く声だった。

「ヤバいって、帰ろう!」

エンジンをかけ直そうとした瞬間、助手席の窓をノックする音がした。

振り向くと、そこには一人の男が立っていた。

白い影の一人――ではない。

彼は普通の服装で、顔は無表情だった。

だが、目だけが異様に濁っていた。

【謎のクレジットカード】

男は無言で、私たちに一枚のクレジットカードを差し出してきた。

「…これ、誰かの落とし物か?」

私は受け取るのをためらったが、友人が先に手を伸ばしてしまった。

その瞬間――男はふっと消えた。

まるで、最初から存在しなかったかのように。

私たちはパニックになり、慌てて車を発進させた。

【カードの異変】

帰宅後、友人はもらったクレジットカードをじっと見つめていた。

カードには、名前も番号も何も書かれていない。

ただ、中央に小さな波模様だけが刻まれている。

「これ、普通のカードじゃないだろ…」

気味が悪くなり、捨てようとしたが、なぜか手から離れなかった。

まるで、指がカードに吸い付いているかのように。

【友人の変化】

それから数日後、友人の様子がおかしくなった。

「海、行かなきゃ…」

そう呟きながら、無意識に海の方向を見つめている。

顔色はどんどん悪くなり、目は虚ろだった。

私は何とかカードを取り上げようとしたが、彼は異常な力でそれを握りしめ、こう言った。

「戻らないと、いけないんだ。」

【海への帰還】

ある晩、友人は姿を消した。

警察に連絡し、捜索が行われたが――彼の痕跡は見つからなかった。

ただ、あの海沿いの道路で、友人のものと思われる靴だけが揃えて置かれていた。

そして、その近くには――あのクレジットカードがポツンと置かれていた。

カードの中央の波模様は、まるで生きているかのようにゆらゆらと揺れていた。

【エピローグ】

私は今でもその海岸には近づかない。

たまにニュースで、「失踪事件」や「行方不明者」の報道を見ると、あの白い影たちを思い出す。

そして――。

その影の中に、友人の姿が並んでいる気がしてならない。

もし、海沿いで奇妙なカードを差し出してくる誰かに出会ったら――

決して、受け取ってはいけない。



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