怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

声が聞こえたけど誰もいない場所 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

「……こっち、見てるよね?」

静まり返った図書館の隅で、誰もいないはずの本棚の向こう側から 声が聞こえた。

友人と二人きりのはずだった。

でも、確かに聞いた。

もう一人、誰かがいる――。

第一章:静かな図書館

大学の期末試験前、友人の田中と一緒に市立図書館で勉強していた。

平日の夜で、閉館間際のため人影はほとんどない。

広い館内に響くのは、ページをめくる音 と 蛍光灯の微かな唸り音 だけ。

ふとした瞬間、妙な違和感 を覚えた。

「……田中、今、誰か喋った?」

「え? 何も聞こえなかったけど?」

耳を澄ませると、再び 小さな声 が聞こえた。

「……見つけた……」

第二章:声の正体を探す

私たちは顔を見合わせ、声の方へ向かった。

声は資料室の奥、普段ほとんど使われない古い本が並ぶエリアから聞こえてくる。

薄暗く、天井の蛍光灯もちらついている。

「……誰かいるんですか?」

呼びかけても、返事はない。

でも、確かに “気配” だけは感じる。

本棚の隙間を覗いても、誰もいない。

それなのに――

背後から、「見えてるよ」 と囁く声がした。

振り向いても、やはり 誰もいなかった。

第三章:閉館のアナウンス

私たちは気味が悪くなり、元の席に戻った。

その時、閉館を知らせるアナウンスが流れた。

「本日はご来館ありがとうございました……」

慌てて荷物をまとめ、図書館を後にすることにした。

出口へ向かう途中、通路の先に一瞬“誰か”の影 が見えた。

私たちは足早に出口を出た。

第四章:再び聞こえた声

外の空気を吸って少し落ち着いた。

「気のせいだったのかな……?」

田中がそう言いかけた時――

スマホの通知音が鳴った。

画面には、非通知からの着信。

恐る恐る通話ボタンを押すと、耳元から聞こえてきたのは、

「……どこに行くの? まだ、いるよ」

私は慌てて電話を切った。

第五章:家に帰っても続く気配

自宅に戻っても、その声は終わらなかった。

夜中、静まり返った部屋で、どこからともなく聞こえてくる。

「見つけた……ずっと、見てる……」

それは、窓の外から聞こえることもあれば、クローゼットの中から聞こえることもある。

翌日、田中に連絡すると、彼も同じ体験をしていた。

私たちは再び図書館へ向かう決心をした。

しかし――

図書館は1週間前から改装工事で閉館中だった。

結末:本当に“誰”だったのか

あの日、私たちが入った図書館は、存在していなかった。

記録を調べても、そんな開館情報はどこにもない。

でも、確かに中に入ったし、あの声も聞こえた。

今でも、ふとした瞬間に耳元で囁かれることがある。

「見つけた。今も、すぐそばにいるよ。」



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