怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

使っていないはずの部屋 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

久しぶりに実家に帰ると、妙な違和感を覚えた。

祖母が使っていたはずの部屋――もう何年も使われていないその部屋から、生活の気配がするのだ。

最初は気のせいかと思った。

でも、母が何気なく言った一言に、私は凍りついた。

「おばあちゃん、まだ普通に生活しているのよ。」

第一章:久しぶりの帰省

私は数年ぶりに実家へ帰った。

都会暮らしに慣れ、地元へ帰る機会も減っていたが、仕事が一段落ついたのを機に顔を出すことにしたのだ。

母は変わらず元気で、家の中も昔と変わらない。

だが、ふと気になったことがあった。

祖母の部屋が、昔のまま残っている。

祖母が亡くなったのは、もう五年前。

それ以来、その部屋は使われていないはずだった。

だが――

窓際のカーテンが微かに揺れていた。

「……風か?」

そう思いながらも、なんとなく気になった。

第二章:使われている気配

夕飯の後、何気なく祖母の部屋の前を通った時、違和感が確信に変わった。

ドアの隙間から、うっすらと灯りが漏れている。

「おかしいな……?」

恐る恐るドアノブに手をかける。

カチャ……

ゆっくりとドアを開けた。

すると――

部屋の中は、まるで祖母がまだ住んでいるかのように整えられていた。

畳の上には座布団が置かれ、タンスの引き出しも少し開いている。

そして、テーブルの上には、湯気の立つ湯呑みがあった。

誰かが、ここでお茶を飲んでいる……?

私は背筋がゾクリとした。

「……お母さん?」

母に確認しようと振り返ると――

畳が、ミシッと鳴った。

誰もいないはずの部屋の中から。

第三章:祖母の存在

私はすぐに部屋を飛び出し、母に話した。

「お母さん! おばあちゃんの部屋、誰か使ってる?」

母は不思議そうな顔をして、

「え? 何言ってるの?」

と言った。

「おばあちゃん、まだ普通に生活してるのよ。」

私は耳を疑った。

「……え?」

「毎朝、おばあちゃんの部屋からお茶の香りがするし、カーテンも開いてるのよ。」

「気になって覗くと、部屋はいつも綺麗になってるの。まるで、おばあちゃんがまだそこにいるみたいに。」

母は、それを当たり前のことのように言った。

「おばあちゃん、まだ普通に生活しているのよ。」

私は言葉を失った。

部屋に戻ると、祖母の部屋の電気は消えていた。

まるで、私が見たことを察したかのように。

結末:祖母はどこへ?

その夜、私は眠れなかった。

布団の中で、祖母の部屋のことを考えていると――

ふと、お茶の香りがした。

枕元にあるはずのない、湯呑みの香り。

私は目を閉じたまま、そっと心の中で呟いた。

「おばあちゃん……いるの?」

返事はなかった。

ただ、どこか懐かしい、温かい気配がした。

それきり、私は祖母の部屋を気にすることをやめた。

だって――

祖母は、今も 「普通に生活している」 のだから。



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