目次
久しぶりに読み返した漫画
ある日、部屋の片付けをしていると、昔ハマっていた漫画の単行本が本棚の奥から出てきた。
学生時代に夢中で読んでいた作品だが、最終巻を読み終えたあと、そのまま本棚にしまい込んでいた。
懐かしくなり、ふと手に取る。
「そういえば、どんな結末だったっけ?」
長い間読んでいなかったので、詳細は忘れてしまっていた。
私はベッドに腰掛け、1巻から読み直すことにした。
変わっている物語
久々に読むと、やはり面白い。
登場人物の台詞や展開の一つひとつが、当時の思い出を蘇らせる。
そして、最終巻にたどり着いたとき、違和感を覚えた。
「あれ……?」
確か、この漫画の結末は主人公がライバルと激突し、両者が力尽きて幕を閉じるはずだった。
しかし、読んでいるうちに、まったく異なる展開になっていた。
主人公はライバルと戦わず、別の道を選び、穏やかに人生を終えていた。
しかも、以前読んだときにはいなかったキャラクターが登場し、物語の根幹が変わっている。
「そんなはずない……」
改めて、ネットでこの漫画の最終回について調べてみた。
しかし、どのサイトを見ても、私が覚えていた結末が正しいことになっている。
私の手元の単行本をもう一度見返すが、そこに書かれているのは、ネットに載っているものとは異なるエンディング。
さらに変わる物語
「もしかして、初版と重版で違うのか……?」
そう思い、別の古本屋で同じ最終巻を買い直してみた。
帰宅後、買ってきた本と自分の本を並べてみると――
内容が違う。
新しく買った方には、ネットに載っていた通りのエンディングが書かれている。
しかし、私が持っていた本のエンディングはやはり異なっていた。
「これは、一体……?」
さらに不思議なのは、数日後、もう一度自分の本を開いてみたときだった。
結末が、また違っていたのだ。
結末は、誰が決めるのか
ページをめくるたびに、エンディングが変わっていく。
あるときは主人公が死に、あるときは誰も戦わず平和に終わる。
そのたびに、私は新たな物語を読んでいるような気分になった。
しかし、ある日、ふと本を開くと――
そこに最終話がなかった。
ページはすべて白紙になっていたのだ。
まるで、「結末を決めるのはお前だ」と言われているような気がした。
それ以来、私はその本を本棚の奥深くにしまい込んでいる。
時折、ふと読み返したくなる衝動に駆られるが――
次に開いたとき、どんな結末が待っているのか分からないのが怖い。
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