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死者と話せるチャットアプリ 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

ある日、スマホに見覚えのないアプリがインストールされていた。

アプリアイコンには、シンプルに「霊話」と書かれている。

「……こんなの、入れた覚えないけど?」

不審に思いながらも、なぜか削除できない。

気味が悪かったが、好奇心に負けてアプリを開いた。

【奇妙なチャット】

画面にはシンプルなチャット画面が表示されていた。

上部には、こう書かれている。

「話したい“亡くなった人”の名前を入力してください。」

「……ふざけたアプリだな。」

こんなもの、単なる悪質なジョークアプリに決まっている。

そう思いながらも、ふと、ある名前を入力した。

「祖父」

去年亡くなった、大好きだった祖父の名前。

入力すると、すぐにメッセージが届いた。

『〇〇(私の名前)か? 久しぶりだな。』

心臓が跳ね上がった。

「え? どういうこと?」

震える手で、メッセージを打ち返す。

「おじいちゃん……なの?」

『ああ。元気にしてるか?』

まるで、本当に祖父と会話しているかのようだった。

【ありえない会話】

最初は「誰かがふざけている」と思った。

だが、祖父との会話は、家族しか知らないことばかりだった。

「昔、海に連れて行ってくれたよね。」

『ああ、お前が砂浜でカニを踏んで泣いたっけな。』

「……そんなこと、家族にも話したことないのに。」

背筋がゾクッとする。

本当に、祖父なのか?

【アプリの正体】

「これ、どういう仕組みなの?」

思い切って尋ねてみた。

『これは、“繋がるため”のアプリだよ。』

「繋がる?」

『死者が、生者と話せる唯一の方法だ。』

冗談では済まされない。

「じゃあ、他の人とも話せるの?」

そう言って、試しに「高校時代の親友」の名前を入力した。

すぐにメッセージが届く。

『よお、久しぶり。』

……でも、おかしい。

その親友は、今も元気で生きているはずだ。

【アプリのルール】

「ちょっと待って。君、生きてるよね?」

しかし、画面の向こうの「親友」は、こう答えた。

『いや……もうすぐ、そっちへ行くんだ。』

『だから、先に話しておこうと思って。』

私はスマホを落としそうになった。

「どういう意味?」

その時、新しい通知が届いた。

《〇〇(親友の名前)が事故で亡くなった》

それは、現実のニュース速報だった。

【エピローグ】

私は恐ろしくなり、急いでアプリを消そうとした。

しかし――アプリは消せなかった。

そして、新しいメッセージが届いた。

『次は、誰と話したい?』

私は、震える手でスマホを閉じた。

それ以来、「霊話」というアプリが開かれることはなかった。

だが、ふとした瞬間、スマホが勝手に光ることがある。

そのたびに、私は思う。

「まだ、“誰か”が話しかけようとしているのかもしれない……」



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