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深夜に響く犬の鳴き声 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

夜になると、決まって犬の鳴き声 が聞こえる。

最初は気にしていなかった。

どこかの家で犬を飼っているのだろう、と。

でも、おかしい。

この町に、犬を飼っている家なんて一軒もないのに――。

第一章:深夜の鳴き声

俺が住んでいるのは、小さな田舎町だ。

のどかで静かだが、なぜか犬を飼っている家がない。

昔はみんな犬を飼っていたらしいが、ある出来事を境に、この町から犬がいなくなった と聞いた。

「みんな、犬を飼わなくなったのはなぜ?」

地元の古い住人に聞いてみたことがある。

すると、みんな一様に顔を曇らせ、

「犬は夜に呼ぶからな……。」

と、意味深なことを言った。

詳しく聞こうとしたが、それ以上話してくれる人はいなかった。

第二章:鳴き声の正体

俺が異変に気付いたのは、引っ越してきて半年が経った頃だった。

毎晩、決まった時間に犬の鳴き声が聞こえる。

町のどこかで犬を飼っているのかと思い、昼間に散歩してみたが、やはりどこにも犬の姿はない。

鳴き声はするのに、犬はどこにもいない。

気になった俺は、鳴き声が聞こえる時間に録音をしてみることにした。

そして翌朝、再生してみた。

すると、犬の鳴き声の合間に――

「たすけて……」

と、かすかに人の声が混じっていた。

第三章:町の秘密

気味が悪くなり、町の資料を調べることにした。

すると、町の郷土史に、ある記述を見つけた。

「かつて、この町では犬を神の使いとして崇めていた。
しかし、ある年、大飢饉が訪れ、人々はやむなく犬を食料にした。
その後、町では奇妙な現象が続いたという――。」

その奇妙な現象 の部分には、こう書かれていた。

「夜になると、犬の鳴き声が響き渡るようになった。
犬の姿はどこにもない。
しかし、鳴き声を聞いた者の中には、行方不明になる者もいた。」

俺は、背筋が凍った。

この町から犬が消えた理由は、そういうことだったのか――。

第四章:鳴き声の主

その夜も、いつものように犬の鳴き声が響いた。

だが、その日は妙に近くで聞こえる。

「ワン……ワン……」

いつもより、はっきり聞こえる。

窓を開け、外をのぞいてみた。

誰もいない――。

と思ったその瞬間、家の玄関の方から、カリ……カリ……と何かが引っかく音がした。

犬が、扉を引っかいているような音だった。

でも、いるはずがない。

この町には、犬はいないのだから。

俺は、玄関に向かった。

扉を開けるべきか、迷った。

でも、開けてはいけない気がした。

音は、次第に大きくなった。

「ワン……ワン……たすけて……ワン……」

さっきの録音と同じだ。

犬の鳴き声に、人の声が混じっている。

「……誰だ?」

そうつぶやいた瞬間、鳴き声がぴたりと止んだ。

静寂。

俺は震えながら玄関の覗き穴をのぞいた。

そこには――

真っ黒な何かが、こちらを見つめていた。

結末:鳴き声が止んだ朝

気がつくと、朝になっていた。

玄関の前に行ってみたが、何もなかった。

ただ、一つだけ――

扉の前に、小さな犬の足跡 が残っていた。

それ以来、犬の鳴き声は聞こえなくなった。

まるで、何かが満足して去ったかのように。

だが、俺は今でも思う。

もし、あの夜、玄関の扉を開けていたら――。

俺は、どうなっていたのだろうか?



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