怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

白い空間の継承者 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ある日、私は奇妙な夢を見た。

真っ白な空間。

上下も左右もわからず、どこまでも白が広がっている。

音もなく、風もなく、自分の体すらぼんやりと曖昧な感覚だった。

夢だ。

そう思った瞬間、遠くに誰かが立っているのが見えた。

「次は君の番だ」

私はゆっくりとその人物に近づいた。

相手は、白いスーツを着た初老の男だった。

まるで長年ここにいたかのような、落ち着いた表情をしている。

男は私を見ると、微笑みながらこう言った。

「やっと来たか。」

「……あなたは誰ですか?」

「私は、この場所の管理者だった者だ。」

「だった?」

「ああ。私の役目は今日で終わる。次は君がここを管理する番だ。」

私は理解が追いつかなかった。

「何を言ってるんですか? そもそも、ここはどこなんですか?」

男は静かに首を振った。

「それは私も知らない。だが、ここは常に“誰か”が管理しなければならない場所らしい。」

「管理って……何をすれば?」

「何もしなくていい。ただ、ここに“いる”だけでいい。」

移譲の儀式

「そんなの、冗談じゃない。俺は帰ります。」

そう言って後ろを振り向こうとした瞬間――

足が動かなくなった。

まるで見えない何かに縛り付けられているような感覚。

「……なんだ、これ?」

男は穏やかに言った。

「もう決まっているんだよ。管理者の“移譲”は。」

「移譲……?」

「そう。私は前の管理者から役目を譲られた。そして、今度は君に。」

私は叫びたかったが、声が出なかった。

男が手を差し伸べる。

その瞬間――

目覚めた世界

目を覚ますと、自分の部屋のベッドの上だった。

「……夢?」

妙な疲労感が体を包んでいたが、どこも異常はない。

ただ、ひとつだけ違うことがあった。

壁に掛けていた鏡に、白いスーツの男が映っていた。

だが、よく見ると――

その顔は、私になっていた。



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