怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

幽霊ビルの最上階 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

「この辺に、幽霊ビル があるって知ってるか?」

深夜、同僚と飲んだ帰り道で、ふとそんな話題が出た。

「幽霊ビル?」

「そう。いつ見ても明かりがついてるのに、入居してる会社が一つもないビル らしい。」

そんな馬鹿な話があるか、と思った。

だが、その夜、俺はそのビルの前で足を止めることになる。

第一章:消えたはずのビル

飲み会の帰り道、ふと妙な違和感を覚えた。

――こんな場所にビルなんてあったか?

目の前には、古びたオフィスビルが建っていた。

窓には明かりが灯っているが、看板はなく、どのフロアも入居している形跡がない。

「これが……幽霊ビル?」

冗談半分でスマホを取り出し、ビルの情報を調べてみた。

しかし、どこにもこのビルの情報は載っていない。

スマホのマップを開いても、この場所には「空き地」と記されていた。

そんなはずはない。

――だって、今ここに建っているのだから。

第二章:消えない明かり

翌日、昼間にもう一度その場所へ行ってみた。

……ビルがない。

あるのは、小さな駐車場だけ。

「いや、そんなはずはない。」

昨夜は確かに、ビルが建っていたのに。

狐につままれたような気分でその場を去ろうとしたとき、駐車場の片隅に古びた案内板が倒れているのを見つけた。

そこには、かすれた文字でこう書かれていた。

「〇〇ビル 最上階テナント募集中」

最上階?

……いや、そもそもこのビルはもうないはずだ。

それなのに、「最上階テナント募集中」?

その夜、俺はどうしても気になり、再びその場所へ向かった。

そして――やはりビルはそこに建っていた。

第三章:最上階への招待

ビルの入り口には、重厚なガラス扉があった。

昨夜は気づかなかったが、扉には紙が貼られている。

そこには、「最上階 入居希望者はお入りください」 と書かれていた。

入居希望者?

このビルは、もう存在しないはずなのに?

俺は理屈では説明できない強烈な引力 を感じながら、扉に手をかけた。

……開いた。

中に入ると、埃っぽい空気が漂っていた。

だが、電気はついており、エレベーターも動いていた。

迷った末、最上階のボタンを押した。

第四章:最上階の部屋

エレベーターはスムーズに動き、最上階 に到着した。

扉が開くと、驚いたことに目の前には普通のオフィスが広がっていた。

デスクが並び、パソコンが置かれている。

だが――

誰もいない。

書類が散らばり、椅子が微妙に引かれたまま。

まるで、さっきまで誰かがここで働いていたかのような気配 がある。

デスクの一つに目をやると、名札が置かれていた。

そこには、見覚えのある名前が書かれていた。

……俺の名前だった。

「なんで……?」

思わず後ずさると、背後でエレベーターの扉が閉まる音がした。

振り返ると、そこには誰かが立っていた。

いや――「俺」だった。

もう一人の俺が、微笑みながら、こちらに向かって歩いてきた。

結末:幽霊ビルの正体

翌朝、俺は自分のベッドで目を覚ました。

服も昨日のまま、スマホの充電も切れている。

混乱しながら、昨夜のビルへ向かった。

しかし、やはりそこには何もなかった。

……あれは、夢だったのか?

スマホの電源を入れ、昨日の通話履歴や検索履歴を確認する。

すると、最後に開いていたのは――

「〇〇ビル 最上階テナント募集中」 のページだった。

しかも、予約フォームには俺の名前が入力されていた。

それ以来、俺は時々、あの最上階で働いている夢を見る。

そこで働く「俺」は、いつも微笑んでいる。

……まるで、最初からそこにいたかのように。



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