子どもの頃、「秘密基地」って特別な場所だったよね。
大人には知られたくない、友達だけの小さな王国。
でも、僕と友達が作った秘密基地は、それだけじゃなかったんだ。
なぜなら、そこへ行くたびに異世界へ入った気がしたから。
目次
秘密基地を作る
僕と親友のタカシは、小学四年生。
学校の帰り道にある使われていない神社の裏の竹林が、僕たちの遊び場だった。
ある日、その竹林の奥にちょうどいい空き地を見つけたんだ。
ここなら誰にも邪魔されないし、秘密基地を作るには最高の場所だった。
「ここに基地を作ろうぜ!」
「いいね! 俺んちに使ってないブルーシートあるから持ってくる!」
二人で廃材を集めたり、段ボールを運んだりして、僕たちだけの秘密基地を作り上げた。
完成した秘密基地は、竹に囲まれた小さな空間。
中には小さな木箱を並べて机代わりにし、拾ってきた椅子を置いた。
ブルーシートの屋根があったから、雨が降ってもへっちゃらだ。
でも、その場所は普通の秘密基地とは何かが違っていた。
秘密基地に入ると世界が変わる
不思議なのは、基地に入ると空気が変わることだった。
竹林の中はいつも薄暗く、秘密基地の中はさらに静かだった。
でも、基地に入ると音がまるで消えたように感じるんだ。
風の音も、鳥のさえずりも、遠くの車の音も聞こえない。
「なんか、ここだけ別の世界みたいじゃね?」
タカシも同じことを感じていたみたいだった。
試しに基地の外へ出ると、さっきまでの静けさが嘘みたいに戻ってくる。
「気のせいだよな?」
「だよな……?」
最初はそんなふうに思っていたんだけど、その感覚は日に日に強くなっていった。
異世界への扉
ある日、僕たちは秘密基地でトランプ遊びをしていた。
僕がタカシにカードを渡そうとした瞬間、なぜか手が妙に重たく感じた。
まるで水の中に沈んでいくような、じんわりとした圧力。
「なんか、変じゃね?」
タカシも同じ感覚を抱いていたようだった。
その時、ふと気づいた。
秘密基地の外にあったはずの竹林が、消えている。
いや、竹林自体はあるんだけど、見覚えのある景色じゃない。
いつもの神社の裏とは違い、竹が異様に背が高く、空は不気味に紫がかっている。
「ここ、どこだ……?」
僕たちは秘密基地の外に出てみた。
すると、空気がどこか異様に湿っていて、地面には小さな光る石が散らばっていた。
それだけじゃない。
竹林の奥に、見たことのない影があった。
人の形をしているけれど、顔がぼんやりとぼやけている。
僕とタカシは顔を見合わせ、一瞬で逃げる決意をした。
「帰ろう!!」
僕たちは慌てて秘密基地の中へ駆け込んだ。
そして、息を整えてからそっと外を覗いた。
すると——
いつもの竹林に戻っていた。
それからの秘密基地
それから、僕たちは秘密基地へ行くたびに異世界のような感覚を味わった。
いつもの景色が、少しだけズレる。
どこか、時間の流れが違う気がする。
ある時は、基地の外に出ると昼のはずなのに夜になっていた。
またある時は、僕たちの声が変に響いて、どこからか遠くで真似をするような声が聞こえた。
それでも、僕たちは秘密基地に通い続けた。
怖さよりも、この場所が他とは違う特別な空間に思えたから。
最後の訪問
そんなある日、いつものように秘密基地へ行くと——
秘密基地が消えていた。
ブルーシートも、椅子も、木箱も、すべてなくなっていた。
まるで最初から何もなかったかのように。
「え……? 俺たちの基地……」
竹林は元のままなのに、秘密基地だけが跡形もなく消えている。
誰かに壊された? それとも、最初から存在しなかった?
それ以来、僕たちはあの竹林には近づかなくなった。
まるで、何かに「もう来るな」と言われたような気がして。
大人になった今でも
今でも、たまに考えることがある。
あの秘密基地は、一体何だったのか?
あの異世界のような感覚は、単なる子どもの想像だったのか?
それとも、本当にどこか別の世界へ繋がっていたのか?
一度、久しぶりにあの神社へ行ってみたことがある。
だけど、秘密基地があった場所は綺麗に舗装されて竹林の見るか影もなかった。
まるで、最初からそんな場所はなかったみたいに——。
あの秘密基地は、どこへ消えてしまったんだろう?
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