ある日、私は妙な道に迷い込んだ。
いつもの帰り道を歩いていただけだったのに、気づけば見覚えのない細い道に入り込んでいた。
「……こんな道、あったか？」
住宅街のはずなのに、周囲には古びた塀と苔むした石畳。
夕暮れの光が、どこか不自然に揺らめいている。
スマホのマップを開こうとしたが、なぜか圏外になっていた。
目次
道の異変
とりあえず進んでみることにした。
すると、妙なことに気がついた。
同じ場所をぐるぐる回っている気がする。
曲がり角を抜けた先に、また同じ石塀がある。
視線を感じて振り向いても、誰もいない。
だが、歩けば歩くほど――
「道が狭くなっている」
最初は普通の路地だったのに、次第に壁が迫り、肩が触れそうなほど狭くなっていた。
後戻りしようと振り返ると――
そこには、もう道がなかった。
出口のない道
私は無理やり足を前に進めた。
道はさらに細く、やがて体を横にしなければ進めないほど狭くなった。
「……おかしい……。」
胸の奥に、じわじわと得体の知れない不安が広がる。
そして――
ふと、壁に“何か”が刻まれているのに気づいた。
「ようこそ」
爪で引っかいたような文字が、無数に掘り込まれている。
「……ようこそ？」
その瞬間、足元から誰かの囁き声が聞こえた。
「やっと来たね。」
戻れない道
気づけば、道は完全に塞がっていた。
前にも後ろにも行けない。
「……戻れない。」
絶望したそのとき――
ふっと、視界が暗くなった。
気づいたら
目を開けると、私はいつもの道に立っていた。
スマホを見ると、時間はまったく進んでいない。
「……夢？」
そう思ったが、服には細かい傷と砂埃がついていた。
あの道は何だったのか？
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