怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

知らない道を歩いてしまったら 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

私は毎朝、会社へ向かうために決まった道を歩いている。

家を出て、商店街を抜け、大通り沿いの歩道を進み、駅へ向かう――。

何年も変わらない、いつもの通勤路。

だが、ある朝。

ふとした拍子に、見たことのない道へ入り込んでしまった。

【見覚えのない道】

その日は寝坊し、いつもより急いでいた。

焦っていたせいか、無意識のうちに別の道へ曲がってしまった。

「え? こんな道あったっけ?」

細く、静かな裏路地。

古びた民家が並び、空気が妙に淀んでいる。

だが、なぜか懐かしい感じがした。

「……ま、いいか。どうせ駅にはつながるだろう。」

そう思い、歩き続けた。

しかし――いくら進んでも駅に出ない。

【終わらない道】

5分、10分、20分……

こんなに歩いているのに、景色がほとんど変わらない。

しかも、後ろを振り返ると、いつの間にか来た道が消えている。

「……おかしいな。」

焦りを感じ、スマホの地図を開いた。

だが、現在地はどこにも表示されていなかった。

「GPSのエラーか……?」

そう思った瞬間――

足元に何かが落ちていた。

それは、自分の家の郵便受けに入っていたものと同じ広告チラシだった。

「……え?」

さらに進むと、今度は自分の家の鍵が落ちていた。

「なんで……?」

それに気を取られていると――

遠くの方で、人の気配がした。

【道の向こうにいたもの】

先の方に、誰かが立っていた。

しかし、妙に違和感がある。

よく見ると、その人影は――

まったく動いていない。

まるで、人形のように静止している。

「……すみません、ここって駅に行けますか?」

恐る恐る声をかけると――

その影は、一瞬にして消えた。

ゾクリと背筋が凍る。

「やばい、戻ろう……。」

そう思い、来た道を引き返そうとした。

しかし――

道が消えていた。

【出口】

どこまでも続く見知らぬ道。

足が震え、息が荒くなる。

その時、前方に古びた鳥居が見えた。

「……これをくぐれば、戻れるかもしれない。」

そう直感し、急いで鳥居をくぐった。

――気づくと、いつもの商店街に立っていた。

周囲の人々が普通に歩いている。

時計を見ると、時間は家を出た時と変わっていなかった。

「……なんだったんだ、今のは?」

ふと後ろを振り返った。

しかし、そこには――あの道は、どこにもなかった。

【エピローグ】

それ以来、私は通勤路を変えた。

もう、あの道に迷い込むことはなかった。

だが、時々――

道を歩いていると、不意に視界の隅に見覚えのない路地が現れることがある。

もし、あなたも知らない道を見つけてしまったら――

決して入らないほうがいい。

そこは、本当に"この世界の道"なのか、わからないのだから。



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