怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

髪の毛が増える部屋 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

新しく借りたアパートは、築年数が古いものの、家賃が安くて広かった。

ただ、最初に内見したときから、少し違和感があった。

それは――

床に、長い髪の毛が落ちていたこと。

第一章:髪の毛が現れる

引っ越し初日、部屋の掃除をしていると、また髪の毛を見つけた。

「前の住人のだろうな……。」

そう思いながら掃除機で吸い取った。

しかし、次の日。

また、髪の毛が落ちていた。

昨日、綺麗にしたはずなのに。

「どこから落ちてくるんだ?」

俺は少し不安になったが、気のせいだと思い込むことにした。

第二章:風呂場の排水溝

数日後、シャワーを浴びようとして、排水溝の掃除をした。

フタを開けた瞬間、ゾッとした。

そこには、ありえない量の髪の毛が詰まっていた。

俺の髪は短髪だし、こんな長い髪の毛は抜けるはずがない。

「……まさか、前の住人の?」

だが、引っ越し業者がクリーニングしていたはずだ。

妙な気持ち悪さを覚えながら、髪の毛を取り除いた。

しかし、翌日。

また、排水溝が髪の毛で詰まっていた。

第三章:髪の毛の出どころ

その日から、髪の毛はさらに増え始めた。

枕元、洗面所、キッチンのシンク。

気づけば、俺の服の中にも紛れ込んでいる。

「おかしい……。」

ついに俺は、髪の毛の出どころを突き止めようと決意した。

夜中、部屋中に掃除機をかけ、最後にクローゼットの中を覗く。

そして、クローゼットの天井を見た瞬間――

俺は凍りついた。

そこに、無数の髪の毛が張り付いていた。

第四章:髪の毛が降る夜

「こんなの、普通じゃない……。」

俺は部屋を出ようとした。

しかし、その瞬間――

天井から、髪の毛がゆっくりと降ってきた。

ざわ……ざわ……

長く、黒く、湿った髪の毛が、まるで生き物のように揺れながら降りてくる。

「……なんだ、これ……。」

身動きが取れない。

すると、髪の毛の間から――

青白い手が、そっと伸びてきた。

結末:逃げられない

気がつくと、俺は外に飛び出していた。

もう、この部屋には戻れない。

数日後、管理会社に退去を申し出た。

「すみません、急なんですけど、もう住めません。」

すると、担当者は深くため息をつき、こう言った。

「……やっぱり、出るんですね。」

「え?」

「この部屋、昔住んでいた女性が風呂場で……。」

「……何があったんですか?」

「自分の髪を剃り落として、その後、命を絶ったんですよ。」

俺は背筋が凍った。

あの髪の毛は――

まだ、この部屋に残っているのかもしれない。



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