怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

お札に封じられた廃村 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

大学の夏休み、友人のタカシと一緒にドライブへ出かけた。

目的もなく、ただ田舎道を適当に走る――そんな気ままな旅だった。

「この辺、やけに人気がないな。」

しばらく進むと、森の中にひっそりとした集落が見えてきた。

「……廃村か?」

道路脇の草むらに車を停め、俺たちはゆっくりと村へ足を踏み入れた。

そこには、朽ち果てた家々が並んでいた。

しかし、異様だったのは――

どの家にも、大量のお札が貼られていたことだった。

【異様な光景】

「すげぇ……。なんだこれ……?」

タカシが驚いたように呟く。

ボロボロになった民家の壁、窓、扉――至るところにお札がびっしりと貼られている。

風化して文字が消えかかっているものもあれば、比較的新しいものもあった。

「こんなにお札が貼られてるってことは、何か封じられてるんじゃ……?」

冗談のつもりで言ったが、背筋が寒くなった。

「ねえ、やめよう。ここ、まずい気がする。」

そう言った時だった。

「パタン……」

遠くの家の扉が、勝手に閉まった。

【お札の意味】

「……風か?」

タカシがそう言ったが、風は吹いていなかった。

不気味に思いながらも、好奇心が勝り、一軒の家の前に立った。

お札の隙間から、中を覗く。

真っ暗な部屋の奥に、何かがいる気がした。

その時――

「見たな」

背後で、低い声がした。

振り向いたが、誰もいない。

しかし、タカシの顔は青ざめていた。

「……今、誰かいたよな?」

「……いや、いない。」

俺たちは、もうここにいてはいけないと直感した。

「帰ろう。」

だが、その瞬間――

村中の家の扉が、一斉に「ギィィ……」と軋みながら開いた。

【逃げ場のない廃村】

「やばい……!!」

俺たちは一目散に車へと走った。

後ろで何かの気配が追ってくるのを感じた。

車に飛び乗り、エンジンをかける。

だが――

バックミラーに映る廃村の家々の窓から、無数の黒い影が覗いていた。

そして、その影たちが、少しずつ車へ近づいてくる。

「早く出せ!!」

アクセルを踏み込むと、急発進とともに村を抜け出した。

【エピローグ】

数時間後、ようやく人里に戻った俺たちは、地元のコンビニで休憩を取った。

そこで、店員のおばちゃんに廃村のことを聞いてみた。

「……あそこに行ったの?」

おばちゃんの顔色が変わる。

「やめなさい、あそこはね、昔“何か”を封じるために村ごと封印した場所なのよ。」

「封印?」

「だから、村人は全員どこかへ移された。でもね――」

「お札が剥がれると、“あれ”が出てくるのよ。」

「“あれ”って……?」

おばちゃんは答えなかった。

ただ、俺たちの肩を見つめて、こう言った。

「……ねえ、お札、剥がした?」

「え?」

「あなたたちの背中、汚れてるわよ。まるで、何かに掴まれたみたいに……。」

背筋が凍った。

俺たちは、お札を剥がした覚えはない。

だが、もし村の“何か”が俺たちについてきたとしたら――?

俺たちは、すぐにその場を後にした。

もしあなたが、大量のお札が貼られた廃墟を見つけたら――

決して、近づいてはいけない。

お札は、“何か”を封じるためにある。

それを剥がした時、封印されていたものが解き放たれるのだから。



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