怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

深夜に歩くパジャマの人影 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

その日、俺は久しぶりに実家へ帰省していた。

仕事のストレスで疲れ切っていた俺を見て、母親はこう言った。

「しばらくゆっくりしていきなさい」

実家は田舎の静かな場所にあり、夜になれば聞こえるのは虫の音だけ。

久しぶりのゆったりとした時間に、俺は安堵しながら布団に入った。

だが、夜中の2時――

俺は、妙な物音で目を覚ました。

【パジャマの人影】

「……?」

家の外で、砂利を踏む音が聞こえる。

足音はゆっくりと、庭を歩いているようだった。

両親が起きているのかと思ったが、こんな時間に外へ出るはずがない。

気になって窓をそっと開け、外を覗いた。

そこには、白いパジャマを着た人影が立っていた。

月明かりに照らされたその姿は、肩まで垂れた長い髪、痩せた腕、裸足の足。

誰かが、庭の真ん中に立っていた。

「……誰だ?」

声を出すのをためらった。

直感的に、呼びかけてはいけない気がしたからだ。

【奇妙な動き】

その人影は、じっと動かなかった。

ただ――

顔が見えない。

長い髪が前に垂れていて、表情がまったくわからないのだ。

そして次の瞬間――

その人影は、カクカクと不自然な動きで、庭を歩き始めた。

普通の歩き方ではない。

まるで、映像が飛び飛びになっているかのような、不自然な動作。

足を引きずるように、ゆっくりと歩いている。

「……なんだ、あれ……。」

俺は窓を閉め、布団の中に潜り込んだ。

「見なかったことにしよう……。」

そう思った。

だが――

ガラッ……

窓の外で、誰かが窓を開ける音がした。

【扉の向こう側】

「……嘘だろ?」

家の窓には鍵をかけているはずだ。

にもかかわらず、確実に誰かが開けた音がした。

「親父か……?」

いや、違う。

こんな時間に外へ出る理由がない。

恐る恐る布団から顔を出し、部屋の窓の方を見た。

そこに、白いパジャマが見えた。

窓の隙間から――

パジャマの袖が、静かに揺れている。

俺は、声を出すこともできなかった。

「……開けるな……!」

だが、窓がゆっくりと開く音がした。

【エピローグ】

気がつくと、朝になっていた。

布団の中で縮こまったまま、一睡もできなかった。

昨夜の出来事は夢だったのか?

恐る恐る布団から出ると――

畳の上に、泥のついた裸足の足跡が残っていた。

「……誰が入ってきた?」

母親に聞くと、不思議そうな顔で言った。

「夜中? 誰も起きてないわよ?」

その後、俺はすぐに実家を後にした。

そして帰り際、ふと近所の年配の人に話を聞いた。

「ああ……昔、この家に住んでた女の人が、夜中にパジャマ姿でふらふら歩いてたらしいよ。」

「ある日、そのまま帰ってこなくなったんだってさ。」

「未だに、夜中になると帰ってくることがあるって話だよ。」

俺は二度と、あの家に泊まることはないと決めた。

もしあなたが、夜中にパジャマ姿の人影を見たら――

決して、目を合わせてはいけない。

次はあなたの部屋の前で、窓を開けようとしているかもしれないから。



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