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魍魎召喚の儀式──友人が呼び出したもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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友人の奇妙な趣味

俺の友人・杉本は、昔からオカルトにのめり込んでいた。

心霊スポット巡り、呪術の研究、禁じられた儀式の収集──
俺は正直、あまり関わりたくなかったが、付き合いが長かったこともあり、適当に流していた。

ある日、杉本が興奮気味に話しかけてきた。

「魍魎を召喚する方法を手に入れた。試してみないか?」

魍魎──
古くから語られる化け物の総称。

俺は馬鹿げた話だと思い、「やめとけ」と軽くいなした。
だが、杉本は止めなかった。

「もう準備はできてる。今夜、山奥の神社でやる。お前も来いよ」

俺は断った。

だけど──結局、行く羽目になった。

山奥の神社での儀式

夜11時、杉本に連れられて山奥の廃神社へ。

苔むした鳥居をくぐると、社殿の前に異様な光景が広がっていた。

地面には黒い円陣が描かれ、その周囲には動物の骨や奇妙な文字が刻まれた紙が置かれていた。

「マジでやるのかよ……」

杉本はニヤリと笑うと、懐から古びた本を取り出した。

「この書物に記された言葉を唱えれば、魍魎が現れるらしい」

そして、低い声で呪文を唱え始めた。

「ン・タラ・カン・タラ……」

その瞬間、空気が変わった。

木々がざわめき、風もないのに葉が舞い散る。

どこからか、ギィ……ギィ……という軋む音が聞こえてくる。

俺は背筋が凍った。

「杉本、やめろ……!」

そう叫ぼうとしたが、声が出なかった。

まるで喉をつかまれたかのように、言葉が押し殺された。

異形の者

すると、突然杉本ががくんと前のめりになった。

「おい、大丈夫か!?」

駆け寄ると、杉本の表情が異様だった。

口角を異様に吊り上げ、目を見開いたまま、笑っている。

その目の奥に──
何か別の意志が宿っているように見えた。

「見えた……来た……来たぞ……」

杉本が震える声で言う。

視線の先に、"それ"はいた。

闇の中から、ゆっくりと何かが現れる。

黒い影が渦を巻き、無数の手足がうごめいている。
人の顔のようなものが幾つも浮かび、苦しげに歪んでいた。

「おまエは……誰ダ?」

低く、くぐもった声が響いた。

俺は金縛りにあったように動けない。

杉本が、嬉しそうに呟いた。

「成功……した……」

だが、次の瞬間。

杉本の体が、異形の者に引き寄せられた。

「う、あ、あああ……!」

顔が歪み、血の涙を流しながら、杉本は苦悶の表情を浮かべる。

「おい!やめろ!!」

俺は必死に腕を引いた。

だが、杉本の体はずるずると引きずられていく。

その時だった。

突然、周囲の木々が激しくざわめき、耳鳴りのような音が響いた。

次の瞬間──

魍魎は、消えていた。

杉本は、その場に崩れ落ちた。

杉本の異変

俺は必死で杉本を担ぎ、山を降りた。

だが、それ以来杉本は……変わった。

口数が極端に減り、表情は常にうつろ。

何かに取り憑かれたような目をしていた。

そして数日後、杉本は失踪した。

「魍魎は、まだそばにいる」

そう言い残して。

その後

杉本がいなくなってから数か月後、俺の家の前に、見覚えのある古びた書物が置かれていた。

ページを開くと、最後のページにこう書かれていた。

「次は、お前の番だ」

俺はすぐに本を燃やした。

だが、時々思う。

夜中、ふと視線を感じることがある。

背後を振り返っても、誰もいない──

なのに、耳元で、かすれた声が聞こえる。

「おまエは……誰ダ……?」



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