目次
山奥の小さな村
俺の母方の実家は、山奥の小さな村にある。
人口はわずか30人ほど。村人たちは皆、外の世界と関わることを嫌い、昔ながらの生活を守っていた。
俺が小さい頃、夏休みによくそこへ遊びに行っていたが、ある一軒の家 だけは決して近づいてはいけないと言われていた。
「あの家には、“村の義務” を果たす者が住んでいるんだ。」
「義務って、何?」
「……聞くな。」
祖母も、村の大人たちも、それ以上は何も教えてくれなかった。
禁じられた家
ある年、俺はどうしてもその家が気になり、夜中にこっそり見に行くことにした。
その家は、村の外れにぽつんと建っていた。
木造の古びた家。窓は板で打ちつけられ、玄関には古びた 注連縄(しめなわ) がかかっていた。
「誰が住んでるんだろう…?」
そう思いながら家の前に立つと、中から かすかな物音 が聞こえた。
ゴト…ゴト…
何かを引きずるような音。
そして——
「……誰か、いるのか?」
低く、掠れた声が聞こえた。
俺は驚いて後ずさった。
次の瞬間——
バンッ!
突然、玄関の戸が大きく揺れた。
驚いた俺は、一目散にその場から逃げ出した。
村の義務
翌日、祖母に昨夜のことを話すと、彼女は顔を青ざめ、険しい声で言った。
「あそこには決して近づくな。あれは “義務” を果たすための家なんだ。」
「だから、その義務って何なんだよ?」
「……」
祖母は何も言わなかった。
しかし、その日の夜、俺は村の男たちがひそひそと話しているのを聞いてしまった。
「……そろそろ限界かもしれんな。」
「いや、義務は続けねばならん。」
「……次の者を決めねば。」
何の話をしているのかは分からなかったが、何か 不吉な予感 がした。
義務を果たす者
次の日の朝、その家の前を通ると、家の前に 男が立っていた。
異様にやせ細った体。長い白髪。
ぼろぼろの着物をまとったその男は、俺をじっと見ていた。
「……お前も、いずれ、ここに来るのか?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は全身が凍りついた。
男はゆっくりと家の中へ戻り、バタンと扉が閉まる。
そして、また…
その年の冬、その家の住人は 亡くなった。
村人たちは淡々と葬儀を済ませた後、すぐに 新しい住人 を決めた。
今度は、村の若い男 が選ばれたらしい。
彼は、村の掟に従い、家族とも別れ、あの家に移り住んだ。
それから数年、俺は村に行くことはなかった。
しかし、大人になって久しぶりに訪れた時、ふと あの家のこと を思い出し、祖母に尋ねた。
「あの家の人は…今もいるの?」
祖母は静かに頷いた。
「ええ。“義務” を果たしながら、あの家で生きているよ。」
「結局、あの “義務” って何なの?」
祖母は寂しそうに微笑んだ。
そして、一言だけこう答えた。
「村の “厄” を、一人で背負うこと。」
俺はそれ以上、何も聞けなかった。
ただ、祖母の言葉を聞いた後も、あの家のことを思い出すと 胸がざわつく。
あの家に住む者は ずっと一人で、何かを“封じて” いるのではないか?
そして、彼らが限界を迎えた時——
次の者が “義務” を果たすために、選ばれるのだろう。
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