目次
序章──奇妙な求人
会社を辞めたばかりの「斉藤浩二」は、職探しの最中に奇妙な求人広告を見つけた。
《住み込み管理人募集──高給・経験不問・長期勤務歓迎》
仕事内容は「指定された施設の管理」。応募資格には「家族・友人がいない方」と書かれていた。
「変な条件だな……」
だが、破格の給与に惹かれ、斉藤は応募することにした。
すぐに面接が決まり、指定された住所へ向かう。そこは、山奥にある古びた施設だった。
迎えたのは、無表情な男。
「ここでの仕事は簡単です。ただ、義務を守っていただければ問題ありません」
その「義務」とは──
『決して施設の外に出ないこと』
『夜10時以降は部屋から出ないこと』
『毎日、指定された部屋を確認すること』
それだけだった。
不審に思いながらも、高給に釣られた斉藤は、その仕事を引き受けた。
第一章──誰もいないはずの施設
仕事は驚くほど単純だった。
朝、施設を見回り、指定された部屋の鍵を開け、中を確認する。
中はいつも空っぽ。誰もいない。
「こんな簡単な仕事で、本当にこんな給料をもらっていいのか?」
そう思っていたが、やがて不気味なことに気づいた。
──深夜、誰もいないはずの施設から、微かに足音が聞こえる。
最初は風のせいだと思っていたが、ある晩、明らかに「誰かが廊下を歩いている音」を聞いた。
恐る恐るドアを開けようとしたが、そこで彼は義務を思い出した。
──『夜10時以降は部屋から出ないこと』
彼はドアノブにかけた手をそっと引っ込め、布団をかぶった。
音は、しばらく続いた後、静かになった。
第二章──指定された部屋の秘密
ある日、斉藤は「指定された部屋」の異変に気づいた。
いつも空っぽのはずの部屋。
だが、その日は、テーブルの上に湯気の立つコップが置かれていた。
「……誰か、いるのか?」
恐る恐る室内を調べるが、やはり誰もいない。
だが、翌日、さらに異変が起こった。
机の上に、一枚のメモが置かれていたのだ。
──『やめたいなら、代わりを見つけて』
斉藤は背筋が凍った。
ここに来る前、雇い主がこう言っていたのを思い出した。
「前任者? ええ、確かにいました。でも、もうここにはいません」
前任者も、ここで「義務」を果たしていたのか?
そして、いなくなった?
第三章──孤独の果て
不安が募る中、ある夜、ついに「決定的な出来事」が起こる。
──夜10時過ぎ、ドアをノックする音がした。
「……誰だ?」
返事はない。ただ、コツ、コツ、コツ……と、規則的にノックが続く。
義務を破るわけにはいかない。
斉藤は布団をかぶり、耳を塞いだ。
しかし、音はどんどん大きくなり、ついにはドアが勝手に開いた。
恐る恐る目を開けると、そこには──
自分とそっくりな男が立っていた。
その男は、無表情のまま、低い声で言った。
「代わりを見つけたか?」
斉藤は声を失った。
男は一歩ずつ近づいてくる。
「……やめたいなら、代わりを見つけて」
それが、前任者の言葉の意味だった。
この施設の「義務」を果たす者は、決して辞めることができない。
代わりを見つけない限り──。
終章──新たな管理人
翌日、施設には新しい求人広告が出された。
《住み込み管理人募集──高給・経験不問・長期勤務歓迎》
そこに「斉藤浩二」の名前はなかった。
代わりに、新しい管理人がその施設に赴任することになっていた。
施設の奥の部屋には、ただ一言だけ書かれた紙が置かれていた。
『義務を守れ。孤独に耐えろ』
そして、その夜から──また「誰もいないはずの施設」で、足音が響き始めた。
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