目次
突然の雨宿り
大学の帰り道、俺は急な夕立に遭った。
傘を持っていなかったので、近くにあった古い公園の東屋に駆け込んだ。
その公園は小さく、遊具も古びていて、普段はあまり人がいない。
でも、その日は珍しく、高校生くらいの女の子がひとり、ブランコに座っていた。
彼女は雨に濡れるのも気にせず、ぼんやりと空を見上げていた。
「……風邪ひくぞ？」
思わず声をかけたが、彼女は俺を見ずにこう言った。
「すぐに止むよ。この雨は、毎回30分で止まるから」
「毎回？」
不思議に思っていると、本当にちょうど30分後に雨が止んだ。
女の子はブランコから立ち上がり、俺の方をちらりと見て、微笑んだ。
「あなたも、この公園に引っかかったんだね」
そう言って、俺の前からすっと消えていった。
時計が合わない
家に帰ると、妙な違和感を覚えた。
腕時計を見ると午後6時半。
でも、スマホの時計は午後7時半を指していた。
1時間、ずれている。
「おかしいな……」
電波時計だから狂うはずがない。
テレビをつけても、ニュースの時間が合わない。
東屋にいた時間は、せいぜい30分くらい。
だけど、俺は1時間消えていた。
公園の噂
翌日、気になって公園について調べてみた。
すると、古い掲示板にこんな書き込みがあった。
「あの公園に雨の日に入ると、時空がずれることがある」
「30分のはずが、1時間過ぎている」
「時間を狂わせる女の子がいる」
そして、一番最後の書き込みには、こうあった。
「彼女に出会ったら、二度と公園に行ってはいけない。
何度も行くと、時間のズレが大きくなるから」
ゾッとした。
俺は、確かにあの女の子に会った。
次に行ったら、1時間では済まないのかもしれない。
それ以来、俺はあの公園には近づいていない。
ただ——
それからしばらくして、ふと時計を見たときに1分だけ時間がずれていることが増えた。
もしかしたら、あの公園の影響は、まだ続いているのかもしれない。
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