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【恐怖体験】「狐の窓」──その隙間から覗いてはいけない 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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狐の窓

「狐の窓」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

手の親指と人差し指を軽く重ねて小さな隙間を作り、その隙間から片目で覗くと、普段は見えないものが見えることがある。

これは昔から伝わる「異界を見る方法」だと言われている。

しかし、決して軽い気持ちで試してはいけない。
なぜなら——

「覗いたものも、こちらを見ているかもしれない」からだ。

友人が見てしまったもの

俺の友人、田中はオカルト好きだった。

ある日、大学の講義中に「狐の窓」の話をしたら、田中は興味を持ったらしく、帰り道で実際に試すことにした。

夜の公園、街灯の下で田中は手で「狐の窓」を作り、片目を当てて覗き込んだ。

すると——

「……あれ?」

田中はしばらく黙った後、急に顔をこわばらせた。

「……おかしい。公園の奥の木の下に、人がいる……?」

俺が振り向くと、そこには誰もいなかった。

「何言ってんだ?」

しかし、田中は確かに見えているらしい。

「……じっとこっちを見てる。着物を着た……顔が白い……あれ……?」

田中は手を下ろし、直接その方向を見た。

だが、その瞬間——

「……いない?」

狐の窓で見えていたはずのものが、直接見ると消えていた。

その時は「気のせいだろ」と笑いながら帰ったが、それが間違いだった。

田中の異変

翌日から、田中の様子がおかしくなった。

・深夜になると、「誰かが窓の外に立っている気がする」と言う。
・妙な視線を感じると、無意識に親指と人差し指を重ねてしまう。
・そして、日に日に顔色が悪くなっていった。

俺は心配になり、「狐の窓で何を見たんだ?」と聞いた。

すると、田中は震えながら言った。

「あれ……昨日はひとりだったのに、今日覗いたら、増えてた」

俺はゾッとした。

「お前、まだやってるのか!?」

「だって……やめられない。見られてる気がするんだよ……見てないと、不安になるんだ……」

それが、田中を見た最後だった。

消えた田中

翌日、田中は行方不明になった。

警察に捜索願が出されたが、彼の姿はどこにもなかった。

ただ、田中の部屋には妙なものが残されていた。

壁一面に、親指と人差し指の形をした無数の手形。
まるで「狐の窓」を作るような形で、壁や窓にびっしりと付いていた。

そして、その中心に、小さく震えた字でこう書かれていた。

「次は、お前の番だよ」

俺はすぐにその場を離れた。

それ以来、俺は絶対に「狐の窓」を試さないようにしている。

……もしも、何かが見えてしまったら、そいつもこちらを見ているかもしれないから。



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