目次
序章:狐の窓の秘密
「狐の窓 って知ってるか?」
大学のオカルト研究会に所属する 桐生直人(きりゅう・なおと) は、後輩の 佐伯(さえき) にそう聞かれた。
「……なんだそれ?」
「こうやって、親指と人差し指を丸くして覗くんですよ。」
佐伯は 狐の手の形 を作り、その輪の中を覗き込む。
「それが、狐の窓 って呼ばれてるんです。昔から、日本ではこの方法で“普段見えないもの”が見えるって言われてるらしいですよ。」
「見えないもの……?」
「例えば、隠された神社とか、異世界への入り口とか……。」
「また変な話を仕入れてきたな。」
直人は笑ったが、佐伯は真剣な顔で言った。
「でも、やっちゃダメな場所 があるらしいんです。」
「ダメな場所?」
「山の神社とか、古い鳥居とか……あと、狐の像がある場所では絶対にやっちゃダメ って。」
「なんで?」
「……“向こう側”に気づかれるから、だとか。」
佐伯の言葉に、直人は少しだけ背筋が寒くなった。
第一章:神社の鳥居の向こう
その週末、直人は佐伯と一緒に、地元の古い神社を訪れた。
その神社は山の中にあり、千本鳥居 が続くことで有名だった。
「ここで試してみるんですか?」
「まあ、何も起きないと思うけどな。」
直人は冗談半分で 狐の窓 を作り、鳥居の向こうを覗いた。
—— その瞬間、鳥肌が立った。
鳥居の奥の景色が、さっきまでと違う。
普通なら続くはずの参道が、妙に暗く霞んでいる。
そして、そこに——
白い着物を着た何か が立っていた。
顔はぼんやりとしていて見えないが、確かにこちらをじっと見ている。
「……っ!」
思わず手を離すと、景色は元通りになった。
「どうしたんですか?」
「……いや、何でもない。」
佐伯には見えていなかったらしい。
直人は、「見なかったこと」にしようとした。
しかし、それは “向こう側”に気づかれた瞬間だった。
第二章:ついてくる影
神社を後にし、帰宅した直人だったが、その夜から 奇妙な違和感 を覚えるようになった。
部屋の窓の外、誰もいないはずの道に、時折 白い影が立っている。
夜中にふと目を覚ますと、耳元で微かに 「……みつけた……」 という声が聞こえる。
(……何か、おかしい。)
気になり、翌日、佐伯に相談すると、彼は真っ青になった。
「先輩、それ“向こうの世界のもの”がついてきてるんじゃないですか?」
「……ふざけるなよ。」
「いや、本気で言ってます。狐の窓で覗いたものがこっちを認識すると、追いかけてくることがあるって……。」
「じゃあ、どうすればいい?」
「もう一度、狐の窓で“ちゃんと見れば” いいんですよ。」
佐伯の言葉に、直人は覚悟を決めた。
第三章:本当に見えてはいけないもの
その夜、直人は部屋の中で 狐の窓 を作り、ゆっくりと覗き込んだ。
—— そこにいた。
白い着物の影が、すぐ目の前に立っていた。
今度は、顔もはっきり見えた。
—— 狐の顔をした女。
「……こっちへおいで。」
女が、手を伸ばしてくる。
直人は恐怖で動けなかった。
その時、突然、スマホが震えた。
佐伯からのメッセージだった。
《目を合わせるな! 手を離せ!》
直人は反射的に 手を開いた。
—— ブツンッ!
視界が元に戻ると、そこにはもう何もいなかった。
しかし、直人は確信した。
狐の窓を通じて、何か異世界のものがこちらを見ていたのだ。
エピローグ:まだ、そこにいる
翌日、直人は神社へ行き、再び千本鳥居をくぐった。
怖くなった自分を笑い飛ばしたかった。
しかし、鳥居の奥を見ると——
—— 参道の端に、白い着物の女が立っていた。
そして、彼女は微かに微笑んだ。
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