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【恐怖体験】「下法(げほう)」──禁じられた呪いの儀式 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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「下法」という呪術

「下法(げほう)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

これは、古くから伝わる呪術の一種で、「人を呪うために行う最も禁忌とされる儀式」だと言われている。

上法(じょうほう)は神仏の加護を得るための術だが、下法はその逆。
人を陥れ、呪い、災厄を呼ぶための術だという。

「この術を知った者は、試したくなる」
「だが、やった者は決して無事ではいられない」

そんな噂を聞いたのは、大学のオカルト研究会でのことだった。

そして——俺の友人の佐藤は、それを試してしまった。

禁じられた儀式

「お前さ、下法って知ってるか?」

ある日、佐藤が俺にそう言ってきた。

「なんだそれ?」

「ネットのオカルト掲示板で見つけたんだけど、ヤバい呪術らしい」

佐藤は好奇心旺盛な奴だった。
都市伝説や心霊スポット巡りが好きで、怖い話には目がなかった。

だが、今回は明らかにいつもと違う雰囲気だった。

「本当に呪えるらしいんだ。しかも、代償付きでな」

「……代償?」

佐藤はスマホを見せてきた。

そこには、こんな内容が書かれていた。

『下法の手順』

深夜0時に、誰もいない場所に行く
逆さまにした鏡を置く
呪いたい相手の名前を、血で書く
「受け渡すものなり」と唱える
終わったら、絶対に後ろを振り向いてはいけない
注意:成功すると、呪いたい相手に不幸が訪れる。
だが、呪いは代償を求める。
その代償は、いつ、どのような形で払われるかわからない。

「……マジでやるつもりか?」

俺は嫌な予感がした。

「いや、試すだけだよ。面白そうじゃん」

そう言って、佐藤は笑った。

「お前、呪っただろ?」

数日後——

佐藤は変わっていた。

顔色が悪く、目の下にはクマができていた。
何かに怯えているような、異様な雰囲気だった。

「……なあ、どうしたんだよ?」

俺がそう聞くと、佐藤は小さな声で言った。

「……お前、俺の後ろに何か見えるか?」

「は?」

「最近、後ろに気配を感じるんだよ。」

俺はゾッとした。

「お前……まさか、本当に下法をやったのか?」

佐藤は震えながらうなずいた。

「呪った相手は?」

「……田村だ」

田村というのは、佐藤が以前トラブルになった相手だった。

「田村、どうなった?」

「……事故に遭ったらしい。足を折って、しばらく入院するって」

俺は寒気がした。

本当に、呪いは成功してしまったのか?

何かが、背後にいる

それから佐藤は、日に日に憔悴していった。

「夜になると、後ろに“何か”がいる……」
「振り向くなって言われたのに……見てしまいそうになる……」

そして、最後に会った日——

佐藤は俺に、震える声でこう言った。

「なあ、俺の後ろに何かいるよな?」

「……何もいないよ」

だが、その時、俺は見てしまった。

佐藤の背後——

黒い影のような“何か”が、じっと彼の首元に顔を寄せていた。

佐藤の行方

その翌日、佐藤は行方不明になった。

部屋には、逆さまになった鏡と、血の滲んだ紙が残されていた。

鏡には、何かの手形がついていた。

そして、鏡の端に、こう書かれていた。

「受け取った」

佐藤は、呪いの代償として何かに連れて行かれたのだろうか。

俺は今も思う。

「下法」は、決して試してはいけない呪いだったのだ。



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