目次
奇妙なおまじない
「このおまじないをやると、自分とそっくりな“もうひとり”が現れるらしいよ。」
中学の昼休み、クラスのユウカがそんな話をしてきた。
「なにそれ?」
「夜中の2時に、部屋の鏡の前でロウソクを灯して、こう言うんだって。」
『わたし、わたし、もうひとりのわたし。今ここに来て。』
「そうすると、鏡の中に自分そっくりな影が映るらしい。」
「怖っ!」
俺たちは面白がったが、ユウカはニヤリと笑って言った。
「でもね……絶対に目を合わせちゃダメ なんだって。」
「……なんで?」
「わかんない。でも、目を合わせると、“もうひとり”がこっちに来るらしいよ。」
まるでホラー映画みたいな話だ。
「そんなの嘘だろ。」
「じゃあ、試してみる?」
結局、その夜、俺は試すことにした。
おまじないを試す
夜中の2時。
部屋の電気を消し、ロウソクをつける。
鏡の前に座り、ゆっくりと唱えた。
「わたし、わたし、もうひとりのわたし。今ここに来て。」
……何も起こらない。
やっぱり、ただの噂か。
そう思った瞬間——
スッ……
鏡の中の俺が、ほんの少し遅れて動いた。
まるで映像がズレたような違和感。
心臓がドクンと跳ねた。
「……え?」
俺が瞬きをすると、鏡の中の俺は 一瞬だけ瞬きをしなかった。
……いや、気のせいか?
もう一度瞬きをしてみる。
今度は、鏡の中の俺が少しだけニヤッと笑った。
「……っ!」
ゾワリと鳥肌が立った。
これは、俺じゃない。
目を合わせてはいけない
(目を合わせちゃダメだ……)
そう思いながら、そっと目をそらした。
そして、ロウソクの火を吹き消す。
部屋は真っ暗になった。
よし、これで終わりだ——そう思った瞬間。
「……もう、消したの?」
鏡の方から、俺と同じ声が聞こえた。
全身が凍りついた。
「……いるのか?」
もちろん、返事はない。
でも、確かに 何かの気配 を感じる。
俺はゆっくりと、スマホのライトをつけた。
そして、恐る恐る鏡を見た。
そこには、俺がいた。
……ただし、俺とは逆の向きに動いていた。
“もうひとり”の存在
鏡の中の俺は、普通の俺と同じ動きをしている。
だが、顔だけが違う。
目が、合わない。
いや、厳密に言えば——
俺が動かしていないのに、視線が俺の方を向いていた。
(ヤバい、ヤバい、ヤバい……!)
俺はスマホを握りしめ、鏡から目をそらした。
そして、手探りでロウソクを掴む。
もう一度火をつけた。
その時、耳元で囁き声が聞こえた。
「……目を、合わせて。」
俺は恐怖のあまり、部屋を飛び出した。
消えない影
翌朝、ユウカにおまじないの話をした。
「ねえ……あれ、冗談だったんだよな?」
「え? なにが?」
「“もうひとり”を呼ぶおまじない。」
すると、ユウカは不思議そうな顔をした。
「……え? そんな話、してないよ?」
「……は?」
「私、おまじないの話なんてしてないけど。」
背筋が凍った。
俺は、誰からこの話を聞いた?
考えれば考えるほど、思い出せない。
その日の夜。
俺は何気なく、鏡の前を通った。
そして、思わず立ち止まった。
鏡の中の俺が——
ほんの少しだけ、動くのが遅れていた。
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