目次
序章──おまじないが大好きな友達
小学校5年生の桜井美咲には、クラスに仲良しの友達がいた。
名前は高橋瑠奈。
瑠奈はとにかく「おまじない」が好きで、毎日のように新しいおまじないを美咲に教えてくれる。
「美咲! 今日のおまじない、すっごいんだよ!」
「また? 今度は何?」
「“消えた手紙が戻ってくる”おまじない!」
瑠奈はそう言って、満面の笑みを浮かべた。
「消えた手紙?」
「そう! なくした手紙や、送るのをやめた手紙が、ちゃんと戻ってくるの!」
「……なんか、ちょっと怖くない?」
美咲は首をかしげたが、瑠奈はおかまいなしに話を続けた。
「ねぇ、美咲も一緒にやろうよ! 昔書いたけど出さなかった手紙、あるでしょ?」
昔書いたけど出さなかった手紙の代わりに失くした手紙が返ってくるというのだ。
「えぇ……まあ、一つくらいは……」
美咲は、家の引き出しにしまってある昔の手紙を思い出した。
幼稚園の頃に書いた手紙で、大好きだった先生にあげるつもりだったけど、恥ずかしくてやめたのだ。
「じゃあ、明日学校でやろう!」
こうして、二人は次の日、「消えた手紙が戻ってくるおまじない」を試すことになった。
第一章──消えた手紙のおまじない
次の日の放課後。
美咲と瑠奈は、人気のない図書室にこっそり集まった。
瑠奈がノートを開き、おまじないの手順を読み上げる。
封筒に、昔書いた手紙を入れる。
封筒の表に、自分の名前を逆さまに書く。
赤い糸で封筒を結ぶ。
「手紙は巡る、また私のもとへ」と3回唱える。
封筒を机の引き出しにしまう。
「これで、しばらく待てば、手紙が戻ってくるんだって!」
美咲は半信半疑ながら、幼稚園の頃に書いた手紙を封筒に入れ、机の引き出しにしまった。
「本当に戻ってくるのかな……」
「楽しみだね!」
そう言って、二人は帰宅した。
第二章──戻ってきたのは……?
次の日。
美咲が机の引き出しを開けると、確かに昨日しまった封筒があった。
「ほんとに戻ってきた……?」
しかし、何かがおかしい。
美咲は、そっと封を開けた。
──中に入っていたのは、美咲の字ではない手紙だった。
「え?」
慌てて手紙を広げると、こう書かれていた。
「これを読んだあなたへ。私のこと、覚えていますか?」
ゾクリと背筋が寒くなる。
「何これ……私、こんなの書いてない……」
美咲は瑠奈を呼び、二人で手紙を読んだ。
「私は、あなたが書いたはずの手紙です。あなたが捨てたのではなく、しまった手紙です。」
「……捨てたんじゃなくて、しまった?」
美咲は震えながら、記憶をたどった。
「私、本当にこんな手紙、書いたっけ……?」
「もしかして、違う誰かの手紙が戻ってきちゃったの……?」
二人は顔を見合わせた。
そして、瑠奈がハッと気づいたように言った。
「……あのさ、おまじないの説明に“送るのをやめた手紙”って書いてあったよね?」
「うん……」
「もしかして、私たちじゃなくて、もっと昔に“手紙を出せなかった誰か”の手紙が戻ってきたんじゃ……?」
美咲は冷たい汗が流れるのを感じた。
もう一度、手紙に目を落とす。
──最後の一文が目に入った。
「今度は、ちゃんと届けてくれますか?」
終章──最後のお願い
美咲と瑠奈は震えながらも、手紙を調べることにした。
封筒の裏には、かすれた文字で宛名が書かれていた。
──「桜井先生へ」
「……先生?」
美咲の頭に、幼稚園時代の記憶がよみがえった。
──優しかった先生。でも、結婚して遠くへ引っ越してしまった。
「これ、私の……?」
幼稚園の時に書いた手紙。でも、先生に渡せなかった。
「私の手紙が、戻ってきたの?」
手紙を握りしめた瞬間、美咲は確信した。
この手紙は、ずっと渡されるのを待っていたのだ。
「……瑠奈、私、この手紙、送るよ」
「……うん」
二人はその日、封筒を新しいものに変え、ちゃんと宛先を書いた。
そして、美咲はポストに手紙を投函した。
「今度こそ、ちゃんと届きますように」
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