「119番、救急要請です。現場は〇〇トンネル付近、交通事故——負傷者1名」
深夜2時、救急隊員の村上は無線を受け取った。
「夜中の事故か……行くぞ」
救急車がサイレンを鳴らしながら現場へ向かう。
だが、この時の村上はまだ知らなかった。
今から運ぶ患者は、この世の人間ではないということを——。
目次
奇妙な事故現場
事故が起きたのは、街から少し離れた〇〇トンネルの手前だった。
警察よりも先に到着した村上たちは、懐中電灯を片手に現場を確認する。
道路の中央に、20代後半くらいの男が血まみれで倒れていた。
「意識レベルJCS300(=意識なし)、脈微弱、呼吸不安定!」
「すぐに搬送準備!」
村上たちは男を担架に乗せ、救急車へ運び込んだ。
しかし——違和感があった。
事故を起こした車が、どこにもない。
周囲にブレーキ痕もなく、ぶつかったようなガードレールの損傷もない。
「……おかしくないか? 何に轢かれたんだ?」
「後で警察が調べるだろう。今は搬送が先だ」
救急車は、男を乗せて病院へ向かった。
だが、この後、さらに不可解なことが起こる。
搬送中の異変
走行中、後部スペースにいた村上が、男のバイタルを確認する。
心拍数が急激に下がっている。
「おい、やばいぞ! 心停止寸前だ!」
村上は胸骨圧迫を開始した。
「……っ、ダメだ! 反応がない!」
救命措置を続けながら、ふと患者の顔を見た。
その瞬間——
男が、笑っていた。
血まみれの顔のまま、口角だけを引き上げていたのだ。
「……!!」
心臓が凍りつく。
さっきまで意識がなかったはずなのに。
「村上、どうした!?」
同僚の声でハッとする。
再び男の顔を見ると——
笑っていない。
「……気のせいか?」
動揺しながらも、村上は蘇生処置を続けた。
しかし——その時だった。
ガタン!!
救急車が大きく揺れ、急停車した。
「うわっ!!」
運転席の隊員が叫ぶ。
「どうした!?」
「……わからない。急にハンドルが取られて……!」
そして、ふと気づいた。
外の景色が変わっている。
本来なら病院まで一本道のはずなのに——
なぜか、事故現場の〇〇トンネルの前に戻っていた。
「……なんでここに?」
救急車の中は、不気味な沈黙に包まれる。
そして、村上が再び男の顔を見ると——
今度は、確実に笑っていた。
「——着いたよ」
そう囁いた瞬間、男の心電図はピーーーー……というフラットライン(=完全な心停止)を示した。
村上は戦慄しながら、ゆっくりと男の顔を覆う。
しかし——
男の目は、まだ"こちらを見ていた"。
男の正体
その後、警察と病院側の調査で、驚くべき事実が判明した。
この男は、すでに10年前に死んでいた。
〇〇トンネルで起きた交通事故の被害者だったのだ。
当時、救急車で搬送される途中、男は病院に着く前に心停止したという。
つまり——
村上たちが運んだのは、10年前に亡くなったはずの男だったのだ。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】

ロリポップ!

ムームーサーバー

新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp


![]() | 新品価格 |

![]() |

![]() | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |

