「ねえ、これ……読んでみる?」
夏休みの終わり頃、クラスメイトの斉藤がそう言って、一冊のノートを見せてきた。
「何それ?」
「田村のこと、覚えてる? この前まで同じクラスだった田村のやつだよ」
田村……?
確かに、1学期までは同じクラスだった気がする。
けど、夏休みに入ってから急に転校したと聞かされて、それきりだった。
「それ、田村の日記?」
「そう。アイツのロッカーにこれだけ残ってたんだよ」
そう言って斉藤は、少し汚れた黒い表紙のノートを差し出してきた。
「読んでみようぜ」
最初は躊躇したけれど、好奇心には勝てなかった。
今思えば——絶対に読んではいけなかった。
目次
日記の内容
ノートの表紙には、ボールペンで「田村の日記」と書かれていた。
ページをめくると、1ページ目から妙な違和感があった。
【6月10日】
今日は学校で〇〇くん(俺の名前)と話せて楽しかった。
もっと仲良くなれたらいいな。
【6月14日】
〇〇くんが授業中にこっちを見た。
偶然かな? でも、嬉しい。
「……なんだよ、俺のことばっかりじゃん」
「アイツ、お前のこと好きだったんじゃね?」
斉藤がからかうように笑う。
でも俺は、ページをめくる手が止められなかった。
違和感
【6月23日】
今日も〇〇くんを見てた。
でも、たまに気づかれそうで怖い。
【6月30日】
〇〇くんの後ろに、知らない人が立ってた。
誰だろう。顔が見えなかった。
「……は?」
ゾクリとした。
「後ろって……どういうこと?」
斉藤も少しだけ表情を曇らせた。
でも、まだ読み進めてしまう。
7月以降の記録
【7月5日】
今日も〇〇くんの後ろに、あの人がいた。
だんだん近づいてる気がする。
【7月8日】
あの人、今日もいた。
でも、〇〇くんは気づいてない。
顔が、少しだけ見えた。
目が真っ黒だった。
「……やめようぜ、これ」
俺は不安になり、ノートを閉じようとした。
でも斉藤が言った。
「おい、あともう少しだけ読もうぜ。どうなったか気になるだろ?」
俺は嫌な予感がしながらも、次のページを開いた。
最後の記録
【7月14日】
〇〇くんのすぐ後ろまで来てた。
もう、顔がはっきり見える。
皮膚がなくて、骨みたいな顔。
でも、〇〇くんはまだ気づいてない。
「……」
読んでいるだけで、背筋が凍る。
ページをめくる手が震えた。
【7月16日】
〇〇くんの耳元で、あれが何か言ってた。
でも、〇〇くんは気づいてない。
明日、私が止めなくちゃ。
明日、私が代わりになる。
【7月17日】
ごめんなさい。
でも、これで〇〇くんは助かる。
あれが私を見てた。
これで終わる。
【7月18日】
終わらなかった。
まだ見てる。
ずっと私の後ろにいる。
顔が近い。
誰か助けて。
7月18日の記録を最後に、ノートは破り取られていた。
消えた田村と、その夜
「……これ、マジかよ」
斉藤が冗談半分に笑いながら言った。
でも俺は笑えなかった。
田村は確かに、7月18日を最後に学校に来なくなった。
しかも転校だと言われていたけど——誰も引っ越し先を知らないと言っていた。
「やっぱ気味悪いな、帰ろうぜ」
俺たちはノートを閉じ、学校を後にした。
しかし、その夜——俺は最悪の悪夢を見ることになる。
読後の悪夢
夜中、金縛りにあった。
体が動かない。
耳元で、誰かの息遣いが聞こえる。
「……気づいて」
ガリガリガリ……
枕元から壁を爪で引っかく音が聞こえた。
目を開けたくない。
でも、どうしても目を開けてしまった。
枕元に、田村が立っていた。
ただし、顔はもう原型を留めていなかった。
皮膚が剥がれ、目は真っ黒に落ち込み、口だけが引き攣った笑みを浮かべている。
「……気づいて、くれた?」
俺は絶叫し、そこで目が覚めた。
翌日
翌日、俺は斉藤に昨日の夢のことを話した。
「俺も……見た」
斉藤の顔は青ざめていた。
「田村が出てきて、『私、代わりになれた?』って……」
そして、その日の放課後。
俺たちは日記を学校に戻し、誰にも話さないことに決めた。
でも——
帰り道、俺たちの後ろを誰かがずっとついてきていた。
振り向く勇気は、なかった。
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