目次
友だちの日記
高校の時、俺には田中という親友がいた。
田中はどちらかと言えば大人しい性格だったが、オカルトや都市伝説に強い興味を持っていた。
特に「魍魎(もうりょう)」の話には異常なほど興味を示していた。
魍魎とは、人の魂を喰らい、存在を狂わせる邪悪な存在だとされている。
「魍魎を呼び出せたらさ、死んだ人間とも話せるらしいぜ」
田中は冗談のように言っていたが、俺は気味が悪くて流していた。
そんな田中が行方不明になったのは、夏休みの終わり頃だった。
田中の部屋
田中が消えた翌日、俺は心配で彼の家に行った。
家族は警察に捜索願を出していたが、手がかりは何もないらしい。
「部屋を見てもいいですか?」
俺がそう頼むと、田中の母親は少し迷った後、うなずいた。
田中の部屋は妙に寒かった。
窓は閉まっているのに、何かが這うような冷気を感じた。
机の上には日記帳が置かれていた。
何気なく開くと——
そこには、魍魎召喚の手順が書かれていた。
【魍魎召喚の儀式】
深夜2時に、暗闇の中で鏡を置く
自分の名前と「召喚するものの名」を紙に書き、口の中に含む
目を閉じたまま「魍魎よ、我が前に現れよ」と3回唱える
呼び出したものを返すには、必ず翌朝までに御札を貼り直す
注意:失敗すると、呼び出したものに取り憑かれる
「……何やってんだよ、田中……」
ふざけ半分でやったのか、それとも本気だったのか。
ただ、その下のページを見て、俺は手を止めた。
日記には、田中の震える字でこう書かれていた。
『呼んでしまった。』
『目を開けた瞬間、鏡の中に"俺じゃない何か"がいた。』
『そいつが、ニヤニヤ笑いながらこっちを見てた。』
『返そうとしたけど、御札が見つからない。どうしよう。』
『夜中になると、ドアの前に誰かが立っている。』
『ノックしないでくれ。頼むから、開けないでくれ。』
心臓がバクバクした。
「やばい……田中、何か呼び出しちまったのか……?」
恐る恐る部屋の中を見回すと、壁の一部に御札が貼られていた跡があった。
だが、その御札は無理やり剥がされたような痕が残っていた。
そして、部屋の隅には——
何かが這いずったような黒い染みがあった。
最後の録音データ
机の上には、田中のスマホが置いてあった。
ロックは解除されており、最後の音声メモが残っていた。
俺は恐る恐る再生ボタンを押した。
「……召喚の儀式を始める……」
田中の声だった。
儀式の手順を読み上げた後、静寂が続く。
「魍魎よ……我が前に現れよ……」
その瞬間——
「ギィ……ギィ……」
何かが床を引きずるような音が録音されていた。
田中の呼吸が荒くなる。
「う……うわぁぁぁぁ!!!」
耳をつんざく悲鳴。
そして、その直後——
「……見つけた」
その囁き声は、明らかに田中の声ではなかった。
録音はそこで途切れていた。
行方不明のまま
俺はすぐに警察に録音データと日記のことを話した。
だが、警察は「悪戯の可能性」として扱い、正式な捜査は打ち切られた。
田中は未だに行方不明のままだ。
だが、俺にはわかっている。
あの夜、田中が何かを呼び出し、返せなかったのだと。
——そして、それは今もどこかで田中を引きずっているのだろう。
なぜなら、俺の部屋の前に毎晩、激しいノック音がするからだ。
しかも、そのノックは必ず午前2時に鳴る。
そして、ノックの直後——
「返してくれよ……」
そう、田中の声で聞こえるのだから。
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