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【告知事項あり】その物件に隠された真実 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章:格安物件

「え、こんなに安いの?」

大学進学のため、一人暮らし用の部屋を探していた 坂本悠斗(さかもと・ゆうと) は、不動産サイトで妙に安い物件を見つけた。

「家賃:2万円」
「築年数:20年」
「設備:エアコン・バス・トイレ別」

周辺の相場は5万円以上が普通なのに、この部屋だけ 異様に安い。

「なんか……裏がありそうだな。」

しかし、予算的に助かるため、悠斗はそのまま内見を申し込んだ。

第一章:告知事項あり

翌日、不動産会社を訪れた悠斗は、担当の 中村(なかむら) という女性と面会した。

「では、物件の詳細をご案内いたしますね。」

中村は少し言いづらそうな顔をしながら、物件資料を取り出した。

「……こちらの物件ですが、実は“告知事項あり”の物件になります。」

「告知事項?」

「あ、ええ……。その……以前、住んでいた方が亡くなられたという経緯がありまして。」

「……自殺とかですか?」

「いえ、病死です。ただ、しばらく発見されなかったようで……。」

一瞬、嫌な気がしたが、悠斗は考え直した。

(まあ、別に関係ないよな。)

家賃の安さに惹かれ、即契約を決めた。

「わかりました、ここにします。」

「……そうですか。」

中村は、ほんの一瞬だけ 安堵したような顔 を見せた。

なぜか、その表情が引っかかった。

第二章:奇妙な違和感

引っ越しを終え、悠斗は新生活をスタートさせた。

最初の数日は特に何もなかったが、一つだけ奇妙な点があった。

夜中になると、壁からコンコンとノック音が聞こえるのだ。

「……隣の住人かな?」

最初は気にしなかったが、ノック音は毎晩決まって深夜2時に聞こえる。

コン……コン……コン……

「……うるさいな。」

イライラして壁を叩き返すが、ノック音は止まらない。

翌日、不動産会社に電話を入れた。

「すみません、隣の住人が夜中に壁を叩いてくるんですけど……。」

「え?」

担当の中村の声が、微妙に震えた。

「……隣の部屋、空室ですよ?」

「……え?」

「3年前から誰も入居していません。」

「じゃあ、誰が……」

その瞬間、通話越しにコン……コン……というノック音が聞こえた。

「……今、ノック音しましたよね?」

「すぐ……すぐ確認に行きます。」

中村は慌てた様子で電話を切った。

悠斗は、嫌な予感を抱えながらも、その夜も部屋で過ごすことにした。

第三章:隣の部屋

その夜も、午前2時。

コン……コン……コン……

明らかに隣の部屋からのノック音がする。

悠斗は意を決して、隣の部屋を確かめに行くことにした。

鍵穴を覗くと——

誰もいない。

「……気のせいだよな。」

安心しようとした瞬間、ふと視界の端に何かが映った。

—— 部屋の隅にしゃがみ込む、白い服の女。

「うわぁぁぁ!!!」

悠斗はパニックになり、部屋に逃げ戻った。

しかし、数秒後——

コン……コン……コン……

今度は、自分の部屋のクローゼットの中からノック音がした。

恐る恐る扉を開けると、そこには何もない。

「気のせいだ、気のせいだ……」

震える声で自分に言い聞かせた。

その瞬間、クローゼットの中から声が聞こえた。

「ねえ……私の部屋に入ったでしょ?」

「っ!!!」

恐怖のあまり、その夜は眠れなかった。

エピローグ:告知事項の本当の意味

翌日、不動産会社の中村を再び訪ねた。

「すみません……この部屋、何かおかしいです。」

中村はしばらく黙っていたが、やがて意を決したように口を開いた。

「……、告知事項の内容を正確にお伝えしていませんでした。」

「え?」

「亡くなられた方は、隣の部屋の方なんです。」

「……は?」

「隣の部屋の女性が亡くなり、遺体が発見されたのは……あなたが入居する部屋のクローゼットの中でした。」

「……え?」

「だから……ノック音が聞こえるのは……その方が“部屋に戻りたい”からかもしれません。」

悠斗の背筋が凍りつく。

「では、隣の部屋は……?」

「……契約上、入居不可です。」

「でも昨日、隣の部屋のドアの隙間から、女の人がしゃがんでいるのが見えたんです。」

中村は青ざめ、震える声で答えた。

「……その方は……3年前に亡くなった入居者です。」



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