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【心理的瑕疵】告知事項ありの部屋で見た悪夢 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章:告知事項ありの物件

「ここ……家賃、安すぎない?」

社会人1年目の藤原優斗(ふじわら・ゆうと) は、不動産会社で紹介された1Kの格安物件を見つめながらそう呟いた。

駅から徒歩10分、バス・トイレ別、エアコン付き——それで家賃3万円。
相場の半分以下だった。

「……何かあるな。」

物件詳細を見ると、小さく 「告知事項あり(心理的瑕疵)」 と書かれている。

「心理的瑕疵……?」

調べてみると、過去に事件や事故、自殺などがあった物件で、住むことに心理的抵抗がある場合に付けられる告知だという。

「まあ……別に気にしないし。」

優斗は手続きを進め、翌週には入居することになった。

しかし、この時はまだ知らなかった。
この部屋に入った者は、必ず“ある悪夢”を見るということを——。

第一章:奇妙な夢

入居初日。

夜も更け、優斗は荷解きを終えてベッドに横になった。

「疲れた……。」

電気を消し、目を閉じる。

やがて、眠りに落ちた直後——

ガタッ……ガタッ……

部屋の隅から、小さな物音が聞こえた。

「……風かな?」

半覚醒の状態で気にしなかったが、そのまま不気味な夢を見始めた。

夢の中
部屋の中に、自分とは違う誰かが座っている。

髪の長い女だった。

「……誰?」

女はじっと壁の一点を見つめ、微動だにしない。

顔が見えない。

「なんでここに……?」

すると——

女が、ものすごい勢いで振り向いた。

顔には、目も鼻もなく、ただ真っ黒な穴だけが開いていた。

「見つけた。」

その瞬間、優斗は目を覚ました。

「……うわっ!!」

心臓が異常なほど早く打っている。

時計を見ると、午前2時47分。

「……嫌な夢だったな……。」

優斗は悪夢を振り払うように、再び眠りについた。

しかし、次の日からこの悪夢は毎晩続くことになる。

第二章:同じ夢の繰り返し

翌日も、翌々日も——

眠りにつくと、必ずあの女が現れる。

最初は部屋の隅に座っているだけだった。

しかし、日を追うごとに、女は徐々に近づいてくる。

《3日目》
女は、優斗のすぐ横で立っていた。

「見つけた……」

《4日目》
女は布団の横で座り込み、顔のない顔を優斗に向けていた。

「一緒に……なろうよ……」

《5日目》
目を覚ますと、女が布団の中に入っていた。

「うわああああっ!!!」

飛び起きた優斗は、そのまま部屋を飛び出し、コンビニの明かりの下で朝まで過ごした。

もう、この部屋には戻れない。

翌日、不動産会社へ駆け込んだ。

「すみません!! この部屋、おかしいです!!」

すると、担当の不動産会社の男性が青ざめた顔で言った。

「……見ましたか?」

「え?」

「“あの夢”を……。」

第三章:心理的瑕疵の真相

「どういうことですか?」

不動産会社の男性は、苦しそうな表情で話し始めた。

「実は……あなたが入居した部屋、3年前に女性が亡くなっています。」

「……知ってます。告知事項ありって書いてありましたから。」

「はい、ですが、その前の住人も……同じ悪夢を見て発狂し、死亡しました。」

「……」

「それだけじゃありません。」

「この部屋の歴代の入居者全員が、同じ悪夢を見て……最後は心を壊されるんです。」

「だから、心理的瑕疵がついています。」

「それって……」

「あの女は、ここで亡くなった最初の入居者です。」

「でも……なぜ、俺の夢に……?」

エピローグ:夢から帰れない

その夜、優斗は再び部屋に戻った。

「……どうせ、もう寝るしかない。」

覚悟を決め、布団に入る。

やがて眠りに落ちると、またあの夢が始まった。

今度は女がすぐ横に座っていた。

「見つけた。」

動けない。

体も、声も出せない。

女はゆっくりと布団の中に潜り込み——

耳元で、こう囁いた。

「次は、あなたの番だよ。」

翌朝、優斗は布団の中で目を見開いたまま死亡しているのが発見された。

死因は不明。

しかし、後日入居した別の男性も同じように亡くなり、物件には再び「心理的瑕疵あり」と記載されることとなる。

そして今日もまた、不動産サイトにはあの部屋の募集広告が掲載されている——。

「家賃:2万円 ※告知事項あり(心理的瑕疵)」



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