目次
序章:ふと感じる安心感
私は山本美咲(やまもと・みさき)。
ごく普通の大学生だけど、昔からちょっとだけ不思議なことがある。
それは——
「何かに守られている感覚」
例えば、帰り道に不審な人が後をつけてきたとき。
例えば、電車でうっかり寝過ごしそうになったとき。
例えば、バイトでミスをして落ち込んでいたとき。
必ずと言っていいほど、何かが助けてくれるような出来事が起きるのだ。
「たまたまだよね。」
いつもそう思っていたけれど、何かがずっと私を見守っている気がするのは、気のせいなんだろうか。
第一章:誰もいないはずなのに
ある日、夜遅くまでバイトをして、最終バスに乗り遅れてしまった。
「最悪……どうしよう。」
家までは徒歩30分ほど。
仕方なく夜道を歩くことにしたが、途中で背後から足音が聞こえた。
「……誰かいる?」
振り返っても、誰もいない。
「気のせいかな。」
でも、足を速めると足音も速くなる気がする。
怖くなって、コンビニに駆け込んだ。
「はぁ、はぁ……。」
店員さんに「大丈夫ですか?」と声をかけられ、落ち着くまでしばらく店内にいることにした。
数十分後、外を見ると——
明らかに誰かが私の帰りを待っているように立っていた。
「……怖い。」
どうしようかと悩んでいると、突然カラスが鳴き声を上げ、その人影のすぐ後ろを飛び回り始めた。
「カァーッ! カァーッ!!」
その人影は、まるで追い払われるかのように逃げていった。
「……え?」
カラスはしばらくの間、店の前から私をじっと見ていた。
まるで「もう大丈夫だよ」と言うかのように。
私はその日、なぜか「誰かが助けてくれた」と強く感じた。
第二章:落ちたはずの棚
別の日のこと。
大学でレポートを仕上げていた私は、帰宅後すぐに疲れて寝てしまった。
夜中の2時ごろ、ふと目を覚ました。
「……なんか寒いな。」
水を飲もうとキッチンに向かった瞬間——
ガタッ!!
頭上の棚が突然、ものすごい勢いで落ちてきた。
「きゃっ!!」
とっさにしゃがみ込んだが、不思議なことが起きた。
落ちてきた棚の途中で、何かがふわっと止めたようにスローモーションになったのだ。
まるで誰かが棚を押さえてくれたかのように、ゆっくりと床に落ちた。
「……え?」
心臓をバクバクさせながら確認するが、誰もいない。
でも、あのまま落ちていたら確実に頭を直撃していたはずだった。
「……誰か、助けてくれた?」
そんな気がして、胸が温かくなると同時に、少しだけ涙が出た。
第三章:誰だったのか
ある日、母と何気なく話していると、ふと私が小さい頃の話になった。
「そういえば、小さい頃の美咲ってさ——」
「ん?」
「よく、“お兄ちゃん”って言ってたの覚えてる?」
「……え?」
私は一人っ子だ。
「お兄ちゃん? 誰のこと?」
「わかんない。でも、美咲が3歳くらいのとき、よく『お兄ちゃんが遊んでくれる』とか『お兄ちゃんが守ってくれる』って言ってたんだよね。」
「……でも、うち兄弟いないよね?」
「そう。だから私も不思議だったんだけど……。」
母はさらりと流したが、私は妙な胸騒ぎを覚えた。
「……お兄ちゃん?」
覚えていない。
でも——
もしかして、ずっと私を守ってくれているのは、その“お兄ちゃん”なのかもしれない。
エピローグ:手を引かれた夜
それからも私は、何かに守られている感覚を感じ続けている。
夜道を歩いていると、ふと誰かが隣に並んで歩いているような感覚。
落ち込んで泣いていると、背中をさすられているようなぬくもり。
「……ありがとうね。」
誰かはわからないけれど、私は確かに“何か”に守られているのを感じる。
もしかしたら、それは私が忘れてしまったお兄ちゃんの存在なのかもしれない。
でも、きっと——
これからも私は、ずっと守られているのだろう。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】

ロリポップ!

ムームーサーバー

新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp


![]() | 新品価格 |

![]() |

![]() | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |

