怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

部屋に閉じ込められる夢──目覚めても終わらない 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章──同じ夢を繰り返す

会社員の中村翔太は、ここ数日奇妙な夢を見続けていた。

夢の中で、翔太は白い四角い部屋にいる。

窓もない。ドアもない。ただ、真っ白な壁に囲まれた閉鎖空間。

「また、ここか……」

何度もこの夢を見ているのに、夢の中では初めて来たような感覚がある。

翔太は壁を叩き、床を蹴るが、外に出る方法は見つからない。

「……目が覚めれば終わる」

そう思って目を閉じると、意識がふっと遠のく。

そして、目を開けると──

いつもの部屋で朝を迎える。

「……夢か」

最初は気にも留めていなかった。

しかし、その夢は毎晩続いた。

そして、少しずつ変化していった。

第一章──部屋の異変

最初の数日は、ただの閉鎖空間だった。

しかし、ある夜、翔太は夢の中で違和感を覚えた。

「壁に、何か書いてある?」

気づかなかったはずの白い壁の一角に、うっすらと文字が見える。

「お前はここにいる」

「……誰が書いたんだ?」

次の日、夢の中でその文字を確認すると、内容が変わっていた。

「お前はまだここにいる」

「……なんだよ、これ……」

その日から、毎晩壁の文字が変わっていくようになった。

最初は気味が悪いだけだった。

だが、1週間目の夜、翔太はとうとう夢の中で“それ”を見てしまった。

第二章──もう一人の自分

白い部屋の中で、翔太はふと気づいた。

「誰かがいる」

部屋の向こう側の壁際に、もう一人の自分が立っていた。

翔太と同じ顔、同じ服装。

ただし、顔がぼんやりと歪んでいた。

「……誰だ?」

恐る恐る近づくと、そいつも翔太に向かって歩いてくる。

距離が縮まる。

翔太はその顔をじっくりと見た。

──口元だけが、不自然に笑っていた。

「……っ!!」

目を背けた瞬間、翔太はベッドの上で飛び起きた。

「……夢、か?」

汗だくになりながらスマホを確認する。

時刻は午前3時33分。

嫌な気分のまま水を飲み、落ち着こうとした。

しかし、その時。

寝室の白い壁に、文字が書かれていることに気づいた。

──「お前はまだここにいる」

「……嘘だろ?」

翔太は震える指で壁をなぞった。

しかし、指には何もつかない。

「……気のせいか」

そう思い直し、再びベッドに横になった。

だが、次の夜。

翔太は再び、白い部屋の中にいた。

第三章──目覚めても終わらない

今度の夢では、翔太はすぐに壁の文字を確認した。

そこには、こう書かれていた。

「お前はどちらにいる?」

「……どういう意味だ?」

そして、壁際にはまた“もう一人の自分”が立っていた。

前回と違い、そいつは口元だけではなく、全身を不自然に震わせていた。

「お前……誰なんだ?」

翔太がそう言うと、そいつはニヤリと笑い、口を開いた。

「お前が目覚めるのは、どっちの世界だと思う?」

「……は?」

「どちらが夢で、どちらが現実だ?」

翔太はゾッとした。

目覚めれば、いつもの部屋がある。

だが、それは本当に“いつもの部屋”なのか?

「そんなわけない……目が覚めれば戻る……」

「じゃあ、次に目を覚ましたら、確かめてみろよ」

次の瞬間、翔太の意識は途切れた。

終章──確かめるべきこと

目が覚めた。

いつもの部屋。

いつもの天井。

いつもの日常。

翔太は安堵しながら、スマホを手に取った。

時刻は午前3時33分。

「また同じ時間か……」

不気味に思いながら、水を飲むためにキッチンへ向かった。

その時、ふと壁の方を見た。

──白い壁に、何かが書かれている。

「お前はどちらにいる?」

「……!」

恐怖で喉が詰まる。

そして、寝室のドアの方を見た。

そこに、もう一人の翔太が立っていた。

そいつは、不自然な笑みを浮かべながら言った。

「ようやく、わかったか?」

翔太は理解した。

「……俺は、まだ夢の中にいる……?」

そいつはゆっくりと頷いた。

「さて、次に目を覚ましたら……今度こそ、現実かどうか確かめてみろよ」

翔太の意識がまた、暗闇に沈んでいった。

──そして、目が覚めた。

今度こそ、本当に現実だろうか?

壁に書かれた文字は、消えていただろうか?

翔太はまだ、確かめる勇気が出ない。



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