目次
終バスを待つ夜
その日、俺は仕事で遅くなり、終電を逃してしまった。
最寄りのバス停まで歩き、時刻表を確認する。
「……終バス、23時55分か。ギリギリ間に合いそうだな。」
人通りのない夜道で、俺はバスを待った。
しばらくすると、遠くからヘッドライトが見えた。
「おっ、来た来た……」
バスはゆっくりと停まり、ドアが開いた。
しかし——
バスの行き先表示が、見たことのないものになっていた。
『終着:ミナワ』
「……ミナワ?」
そんな路線、聞いたことがない。
でも疲れていた俺は深く考えずに乗り込んだ。
これが、間違いだった。
乗客の違和感
車内は妙に暗く、乗客は10人ほどいた。
だが、誰も話さず、みんな無表情のままじっと前を向いている。
(……なんか、変な雰囲気だな。)
俺は適当な席に座り、スマホを開いた。
しかし——
圏外になっていた。
(え? さっきまで普通に使えてたのに……)
不安になりながらも、しばらくするとバスは発車した。
車内アナウンスが流れる。
「次は……ミナワ……ミナワ……」
機械音声のはずなのに、妙に生々しく、囁くような声だった。
「……なんだ、このバス。」
窓の外を見ると、見覚えのある景色が流れている。
少しホッとした瞬間——
俺はあることに気づいた。
窓に映る乗客の姿が、おかしい。
反射したガラスに映る乗客の影が——
全員、うっすら透けていた。
終点はどこか
(……やばい、降りないと。)
次のバス停で降りようと、立ち上がった。
しかし、立ち上がった途端——
「……次は……ミナワ……」
車内アナウンスがまた流れた。
おかしい。
次の停留所の名前がずっと同じなのだ。
(……どこまで行っても「ミナワ」しかない?)
冷や汗がにじむ。
俺は思い切って、運転手に話しかけることにした。
「すみません、このバスってどこまで行くんですか?」
運転手はゆっくりと振り向いた。
そして、無表情のままこう言った。
「終点まで、ですよ。」
「あなたも、そこで降りるんでしょう?」
その瞬間——
俺の肩を、誰かが後ろから掴んだ。
「ひっ……」
振り向くと、隣の席の乗客が真っ黒な目でじっと俺を見ていた。
「もうすぐ……着くよ……」
乗客全員が、ゆっくりとこちらを向き始めた。
「……うわあああ!!」
俺は恐怖のあまり、非常ボタンを押した。
気づいた時には
——次の瞬間。
俺は、いつものバス停の前に立っていた。
「……え?」
気づけば、バスは消えていた。
スマホを確認すると、時刻は23時56分。
さっきバスに乗った時間のままだった。
(……なんだったんだ、今のは。)
呆然としながら時刻表を見ると、終バスの行き先には「ミナワ」なんて書かれていなかった。
代わりに、ある注意書きが目に入った。
『このバス停では、深夜0時を過ぎてからの乗車はご遠慮ください。』
「……そんなルール、聞いたことないぞ。」
じゃあ、さっき乗ったバスは?
その瞬間、背後からブレーキ音が聞こえた。
反射的に振り向く。
そこには、「ミナワ行き」のバスが停まっていた。
ドアが開く。
「……次は、ミナワ……」
俺は、その場から全力で逃げた。
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