目次
山奥の近道
大学のサークル仲間と旅行に行った帰り道、俺たちは大きな渋滞に巻き込まれていた。
「うわー、全然進まねぇな……」
「もう夜の11時じゃん。明日バイトあるのに……」
そんな時、運転していた田中がスマホでルートを調べ、こう言った。
「おい、この先の山道抜ければ、30分で帰れるぞ!」
「え、でもその道、大丈夫か? 夜だし……」
助手席の村上が不安そうに言ったが、田中はハンドルを切った。
「渋滞で何時間もかかるよりマシだろ」
俺も含め、車内の誰もが疲れていた。
だから、その決断が間違いだったと気づくのは——遅すぎた。
霧の中の人影
山道に入ると、異様なほどの濃霧が立ち込めていた。
「なんだよこれ……」
ハイビームにしても、10メートル先も見えない。
しかも、妙に静かだった。
虫の声も、風の音もしない。
ただ、車のタイヤが砂利を踏む音だけが響いていた。
「……なんか変だな」
村上がそう言った直後——
「あ……」
助手席の田中が急ブレーキを踏んだ。
「うわっ!?」
俺たちは前のめりになりながら、慌ててフロントガラスを見た。
そこには——
無数の人影が、ぼんやりと立っていた。
群霊の道
「え……? なんだ、あれ?」
霧の中に浮かび上がる影。
それは、まるで道路を塞ぐように立ち並ぶ人々だった。
ただし——
全員、微動だにしない。
「……おい、幽霊か?」
田中が冗談めかして言ったが、その声には明らかに震えが混じっていた。
「ちょっと、クラクション鳴らしてみろよ……」
村上がそう言った。
田中が恐る恐る、「プッ……」と軽くクラクションを鳴らした。
その瞬間——
「ザッ……」
人影たちが、一斉にこちらを向いた。
俺たちは息を呑んだ。
霧の中から覗く無数の顔——
どれも目が真っ黒で、口だけが異様に開いていた。
そして——
全員が一歩、車の方へ近づいた。
逃げられない
「……やばい、やばい、やばい!!」
田中はパニックになりながらも、急いで車をバックさせようとした。
だが——
エンジンがかからない。
「カチッ……カチッ……」
「なんで!? さっきまで動いてたじゃん!!」
俺たちはパニックになった。
外を見ると、群霊たちがまた一歩、近づいていた。
その顔には、何の感情もない。
ただ、こちらをじっと見つめながら——
ゆっくりと、確実に、近づいてくる。
霧の中へ消えた田中
「くそっ!! どうすりゃいいんだよ!!」
田中が叫びながら、ハンドルを叩いた。
その瞬間——
「ゴトッ……」
車の天井に、何かが落ちる音がした。
「……え?」
全員、息を呑む。
次の瞬間——
ドンッ!!
フロントガラスに、黒い手形がいくつも浮かび上がった。
「無理!! もう出る!!」
田中はドアを開け、車の外へ飛び出した。
「おい、やめろ!!」
俺たちは必死で田中を引き止めようとしたが——
霧の中へ、田中の姿が消えた。
「田中!! 田中!!」
俺たちは何度も叫んだ。
しかし、田中の返事はなかった。
ただ、霧の中でザッ、ザッ……という足音だけが響いていた。
そして——
気づくと、群霊の姿も消えていた。
消えた存在
エンジンが急にかかり、村上が急いで車を発進させた。
俺たちは田中を置いて逃げるしかなかった。
やがて山道を抜け、ようやく人里へ戻ることができた。
だが——
警察に「田中が消えた」と伝えても、誰も信じてくれなかった。
さらに、俺たちの車の記録を調べても——
「その道は、何十年も前に通行止めになっています」
そう告げられた。
「そんな道は、今は存在しません」
だが、確かに俺たちはその道を通った。
そして、田中は消えたのだ。
彼はどこへ行ったのか——
いや、もしかすると、
彼もまた「群霊の一部」となってしまったのかもしれない。
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