目次
序章:古びた神社
「この辺りに、昔から“狐の窓”って呼ばれる場所があるらしい。」
大学の怪談サークルに所属する 藤原透(ふじわら・とおる) は、仲間の 佐々木遼(ささき・りょう) と共に、山奥の廃神社を訪れていた。
「“狐の窓”って?」
「ある角度からだけ見える“別の世界”のことだよ。本来見えないはずのものが映る場所って言われてる。」
「へえ……。そんなの、本当にあるのか?」
「まあ、実際に確かめてみようぜ。」
二人は神社の鳥居をくぐり、境内に足を踏み入れた。
しかし、そこは長年放置されたままの異様な空間だった。
本殿の扉は崩れ、苔むした石灯籠が不気味に並んでいる。
そして、神社の奥に——
異様に綺麗な“窓”があった。
第一章:狐の窓
「……あれが、狐の窓か?」
古びた本殿の壁に、ぽっかりと四角い穴が開いている。
しかし、奇妙なことに——
その窓の向こうには、真っ白な霧しか見えなかった。
「普通、向こう側が見えるはずだよな……?」
遼が窓の前に立ち、覗き込もうとした瞬間——
ザザッ……ザザッ……
どこからともなく、無数の足音が聞こえてきた。
「……おい、誰かいるのか?」
振り向いても、周囲には誰もいない。
ただ、気づいた。
—— 神社の境内に、無数の白い影が立っていることに。
「……群霊か?」
ぼんやりとした人影が、数十体……いや、数百体、神社の周囲に取り囲むように立っている。
全員がこちらを見ているのに、顔がない。
「……やばいな。」
そう思った瞬間、透は遼が窓の向こうを覗き込んでいることに気づいた。
「おい、やめろ!!」
しかし遼は、何かに引き込まれるように窓の奥をじっと見つめていた。
そして——
遼の顔が、どこかぼんやりと歪み始めた。
第二章:異界の景色
「おい、遼!!」
透が遼の肩を掴むと、彼はガクンと崩れ落ちた。
「……大丈夫か?」
遼は虚ろな目で透を見上げると、ゆっくりと呟いた。
「……見えたんだよ……向こうの世界が……。」
「向こう……?」
「狐の窓の奥には……俺たちが立ってた。」
「……は?」
「俺と透が、ここにいたんだ。でも、もう一人……いや、もっと……」
遼は青ざめた顔で、震える声で続けた。
「“俺たち”が、何十人もいたんだ……。」
その瞬間——
ザザザザッ!!
境内の白い影たちが、一斉に動き出した。
「……こっちに来る!!」
透は遼を引きずるように窓から離れ、神社の鳥居へ向かって走った。
しかし、足元に白い手が伸びてくる。
「お前たちも、“こっち”へ来い……。」
どこからともなく、無数の囁き声が響いた。
第三章:戻ってきた世界
必死に鳥居をくぐり、振り返ると——
そこには何もなかった。
神社も、群霊も、狐の窓も——
すべてが霧の中に消えていた。
「……帰れたのか?」
透と遼は、放心したように山を下りた。
しかし、透には違和感があった。
(何か……おかしい。)
ふと遼の顔を見ると、彼の表情がぼんやりと滲んで見えた。
「……遼?」
「どうした?」
「お前、……本当に遼か?」
遼の顔は、確かに遼のはずなのに——
どこか違う。
まるで、たくさんの顔が少しずつ重なっているように。
「お前……本当に“遼”だよな?」
その瞬間、遼がニヤリと笑った。
「なあ、透。俺たちって、最初から二人だったか?」
「……え?」
「だって……写真には、もう一人写ってるじゃん。」
透は、恐る恐るスマホの写真フォルダを開いた。
そして、戦慄した。
出発前の写真——そこには“見知らぬ誰か”が、一緒に映っていた。
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