目次
祖母の遺品
祖母が亡くなり、遺品整理のために俺と両親は実家へ向かった。
祖母の家は昔ながらの日本家屋で、畳の匂いが染み付いている。
片付けを進める中、俺は妙なものを見つけた。
それは、古びた日本人形だった。
ガラスケースの中に収められ、黒髪の長い少女の姿をしている。
着物は鮮やかな赤だったが、ところどころ色褪せていた。
だが、何より違和感を覚えたのは——
人形の顔が、妙にリアルだったことだ。
まるで、本物の人間の顔を型取ったような、不気味な精巧さ。
「ばあちゃん、こんな人形持ってたっけ……?」
「ううん、見たことないわね……」
母も首を傾げた。
古いものだが、埃一つかぶっていない。
まるで、最近まで誰かが手入れしていたような雰囲気だった。
「処分した方がいいんじゃない?」
母の言葉に頷き、俺は人形のケースを持ち上げた。
——その瞬間、背後でかすかな声が聞こえた。
「……やめて……」
俺はビクッと体を震わせた。
「今、何か言った?」
「え? 言ってないわよ?」
母は怪訝そうな顔をしている。
気のせいかもしれない。
そう思いながらも、俺は人形をそのまま持ち帰ることにした。
囁く声
自宅に戻り、人形を部屋の隅に置いた。
その夜——
「……ねえ……」
微かな声で目を覚ました。
「……?」
部屋を見回すが、誰もいない。
気のせいだろうか?
寝ぼけた頭のまま、もう一度目を閉じた。
——すると、耳元ではっきりと声が聞こえた。
「ここ……あたたかい……」
俺は飛び起きた。
暗闇の中、日本人形がこちらを見ていた。
さっきまで、ケースの中にいたはずなのに。
俺は冷や汗をかきながら、すぐに電気をつけた。
しかし、人形は元のケースの中に戻っていた。
「……夢だったのか?」
だが、ケースのガラスには無数の手形がついていた。
俺は震える手で、それを拭き取った。
人形の秘密
翌日、俺は祖母の家を訪れ、仏壇の前で手を合わせた。
そして、母に聞いた。
「なあ……あの日本人形、何か知ってる?」
すると、母は少し考え込んだ後、こう言った。
「……もしかしたら、それ、“供養人形”かもしれない」
「供養人形?」
「昔ね、戦争や災害で亡くなった子供たちの霊を慰めるために、人形に魂を移す儀式があったのよ」
俺は背筋が寒くなった。
「つまり、あの人形には……」
母は頷いた。
「たくさんの霊が宿っているのかもしれない」
それを聞いた瞬間、俺は気づいてしまった。
——あの夜、俺の耳元で囁いていた声。
一つじゃなかった。
何人もの子供の声が、重なっていたのだ。
増える人形
すぐに人形を供養してもらおうと決意した。
しかし、その夜——
俺は最悪の光景を目にした。
部屋の隅に置いていた日本人形の隣に——
もう一体、同じ人形が増えていた。
「……嘘だろ?」
そして、気づいた。
ガラスケースの中で、日本人形がほんの少しだけ笑っているように見えた。
まるで、新しい仲間が増えたことを喜んでいるように——。
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