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【元の世界に戻りたい】違和感だらけの帰宅 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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序章:奇妙な帰り道

「……疲れた。」

大学生の 佐伯悠真(さえき・ゆうま) は、アルバイトを終えて自転車を漕いでいた。

時間は深夜0時。

いつもの道、いつもの景色。

けれど——

何かがおかしい。

信号がすべて青のまま変わらない。
人通りの多いはずの駅前に誰もいない。
コンビニの看板が、微妙に違う。

「……まあ、気のせいか。」

そう思いながら自宅アパートへ向かった。

しかし、玄関のドアノブを握った瞬間——

強烈な違和感が全身を駆け巡った。

(ここ……本当に、俺の部屋か?)

第一章:家の中の違和感

鍵はいつも通り開いた。

靴を脱ぎ、部屋の電気をつける。

見慣れたリビング、見慣れた家具。

けれど、些細な違和感がある。

本棚の並びが違う。
テーブルの上に見覚えのないコースターがある。
カレンダーの日付が昨日のまま動いていない。

「……まあ、疲れてるからだろ。」

シャワーを浴び、スマホを手に取る。

けれど、SNSを開くと——

友人たちの投稿が、どれも1週間前で止まっている。

「……ネットの不具合か?」

不安になり、グループチャットにメッセージを送る。

《今、起きてるやついる?》

しかし——

誰も既読をつけない。

(おかしい。)

嫌な汗が流れた。

そして、何気なくスマホのカメラを起動し、部屋を映してみた。

すると——

ソファに、見知らぬ誰かが座っていた。

第二章:知らない「俺」

驚いてスマホを落とし、慌ててソファを見る。

しかし、そこには誰もいない。

(……なんだったんだ、今の。)

もう一度カメラを起動し、ゆっくりと部屋を映す。

すると——

今度は、ベッドに誰かが寝ていた。

それは、自分自身だった。

「……俺?」

心臓が早鐘を打つ。

ベッドの“俺”は、穏やかな寝顔をしていた。

そして、次の瞬間——

目を開けた。

鏡のようにそっくりな顔。

しかし、目が合った瞬間——

「おかえり。」

もう一人の“俺”が、にっこりと笑った。

第三章:元の世界に戻る方法

恐怖で体が動かない。

“俺”がベッドからゆっくりと起き上がる。

「疲れただろ?」

「……お前、誰だ。」

「俺だよ。」

「違う。お前は俺じゃない。」

「そんなこと言わずにさ……もう休めばいいよ。」

“俺”が手を伸ばしてくる。

—— このまま捕まったら、戻れない。

本能的にそう感じた。

(ここは、俺の部屋じゃない。)

(ここは……元の世界じゃない。)

頭が割れそうなほどの違和感。

「……戻らなきゃ。」

無我夢中で玄関へ駆け出した。

しかし、ドアが開かない。

「帰らなくていいよ。」

背後から、“俺”の声がする。

「ここで、ずっと一緒にいよう。」

「……嫌だ!!」

ドアノブを思い切り回し、渾身の力で蹴りつけた——

その瞬間、視界が暗転した。

エピローグ

悠真が目を覚ますと、見慣れた自室のベッドだった。

夢だったのかと安堵するも、ふとカレンダーに目をやると、昨日の日付のまま変わっていない。

微かな違和感を覚えながらも、日常が戻ってきたことに安堵する悠真だったが、時折、あの奇妙な世界の光景が脳裏をよぎることがあった。



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